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大好きな第三地区(11)

「確かに。いつの間にか神力に頼りきっていたみたい。でも……群馬で『真実の口』を使って『あるべき場所に戻る』って話したから……あ……」


 この精霊達のいるべき場所は向こうの世界なんじゃ……


「気づいたか? あの世界の精霊をこっちに連れてきたのは、じいちゃんだ。話がしたくてなぁ」


 吉田のおじいちゃんが穏やかな表情で話しているけど……


「精霊達の居場所はあの世界っていう事……?」


「そうだなぁ。それと、ぺるぺるの言う通りにするべきだなぁ」


「……え?」


「いつでも、この世界の第三地区に遊びに来れるようにする。なかなか良い考えだ」


「おじいちゃん……」


「皆で考えようなぁ。じいちゃんがオケアノスの為に創った世界を守る方法を……」


「……! うん!」


「またひとつ前に進んだなぁ。ぺるぺるのおかげだ」


 吉田のおじいちゃんが満足そうに笑っているけど……


「それは違うよ。わたしの力じゃないの。あの世界を愛するピーちゃんとばあばとブラックドラゴンのおじいちゃん。そしてずっとあの世界を見守ってきた精霊達。皆の想いがあの世界を救ったんだよ。でも……完全に救われたわけじゃないんだよね」


「そうだなぁ。約二十年、時が戻っただけだなぁ」


「あの世界の皆は巨大モニターに映るドラゴンの姿のばあばとピーちゃんをどう思ったんだろう」


「うーん……世界を救った『神』? ……救世主? そんな感じか?」


「変わるかな? あの世界は滅びの道を回避できるかな?」


「分からねぇなぁ。でも……乾いた大地に芽が出たように人の子も産まれるようになるだろう」


「……絶望を味わったあの世界に生きる皆は……美しい姿を取り戻した『世界』を美しいまま後世に残す努力をするはずだよね?」


「それも分からねぇなぁ。困ったらまた誰かが助けてくれると勘違いする奴らも出てくるだろうしなぁ」


「欲が尽きないから……? また核を使ったり、暮らしを豊かにする為にあの世界に無理をさせるの?」


「そうだなぁ。誰でも良い暮らしがしてぇし、戦を好む奴もいるからなぁ」


「胸がモヤモヤするよ……」


「じいちゃんもだ……」


 吉田のおじいちゃんと目を見合わせると胸が痛くなる。


「わたし……あの世界が大好きだよ。月海として育ったあの美しい世界が大好きなの。清んだ空気……冬は痛いくらいに肌を冷やして、春は花粉が飛んできて嫌だったなぁ。夏は暑いけど扇風機とかき氷があれば涼しくて……秋は夏に疲れた身体を癒してくれる優しい風が吹いて……」


 懐かしいなぁ。

 大好きな集落の風景……

 あぁ……

 この美しい風景がずっとずっと続けばいいのに。

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