大好きな第三地区(10)
あ……
そうか。
そういう事なんだね。
ベリス王は精霊達の気持ちを試しているんだ。
じゃあ、わたしも協力させてもらうよ。
「精霊の皆は本当はどうしたいの?」
「月海……?」
「本当はどうしたい……とは?」
精霊達が困惑した表情で尋ねてきたね。
「自分の考えを口に出すのは悪い事じゃないよ。わがままなんかじゃないの。聞きたいな、皆の気持ちを……知りたいな、皆の願いを」
「だが……」
「これはわがままだ……」
「そうよ。わたし達はあの世界が破滅へと進んでいるのを知りながら助けられなかった」
「そんな我らがまたあの世界に帰りたいなど……あ……いや……」
やっぱり、そうだったんだね。
「それは、皆の願いなの?」
「え?」
「それは、精霊皆の願いなの?」
「あ……あぁ……」
「でも、わたし達が戻ってもあの世界はまた滅亡へと向かうわ」
「我らは無力だ……」
「存在する意味も価値もない……それがあの世界の精霊。我々は愚かだ……それでもあの世界に居続けたいんだからな」
「なんだ。だったらそう言えばよかったのに」
「……月海?」
精霊がわたしを見つめて呟いたね。
「吉田のおじいちゃん?」
「んん? なんだ?」
吉田のおじいちゃんが向こうの世界を創ったんだよね。
わたしが考えている事をしてもいいか相談してみよう。
「精霊達は向こうの世界に帰りたいんだって」
「そうみてぇだなぁ」
「勇気を出して話してくれた想いを無視できないよ。だって、精霊はこの世界に来た方が幸せだって考えたのはわたし達で、精霊達は向こうの世界に帰りたいと願っているんだから」
「……じゃあ、ぺるぺるはどうするんだ?」
「もう一度『真実の口』の力を使うよ。そしてこう言うの。『向こうの世界の精霊達がいつでもこの世界の第三地区に遊びにこられるようにして欲しい。難しい問題を皆で話し合って、あの世界……吉田のおじいちゃんが創った世界に生きる全ての者達が幸せに暮らせるように導いていきたい。これ以上精霊達が苦しまないように、笑顔で過ごせるように皆で協力したい』……これじゃダメかな?」
「……ぺるぺるは天才さんか? それだとこの『人間と魔族の世界』も含まれるぞ? ははは! また身体中痛くなるけどやるんか?」
「うん! やるよ!」
「でも、今のぺるぺるには神力が足りねぇようだなぁ」
「……え? うぅ……どうしよう」
「ぺるぺるは神力に慣れちまったみてぇだなぁ」
「……? 吉田のおじいちゃん?」
「群馬にいた頃は神力なんかなくても自分で頑張って問題を解決してただろ」
あ……
言われてみればその通りだよ。




