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大好きな第三地区(9)

「家族……」

「本当に月海るみは立派になったわね」

「そうだな」

「我らも不安な気持ちを吐き出せばいいんだな」


 精霊達の表情が少しだけ明るくなったね。


「うん! あ、もちろん精霊の皆もわたしの大切な家族だよ」


「そうです! 我らは家族ですよ! ささ、こちらでこれからの話をしましょう!」


 ……!?

 ベリス王が満面の笑みで精霊達に話しかけた!?


「ちょっと! ベリス王は皆を利用しようとしているね!?」


「利用とは……ぺるみ様は誤解していますよ。いいですか? 誰でも初めての土地にはなかなか馴染めず苦労するものです。そのような時は役割を与えられた方が良いのですよ」


「確かにその方が早く馴染めるかもしれないけど……」


「そうでしょう? それでは、皆様はどのような力をお持ちですか? わたしは商売をしているのですが、よろしければ共に物作りをしませんか?」


 うわ……

 精霊達の力を使って商売をするつもりなんだね。


「商売?」

「この世界の商売と向こうの世界の商売は同じなのかしら?」

「物作りは好きだが……」

「何を手伝えばいい?」


「この世界では精霊は尊敬され愛される存在なのです」


 ベリス王のこの感じ……

 確実に長くなるね。


「尊敬?」

「本当に愛されているの?」

「向こうの世界の人間は我ら精霊の姿が見えなかったが……」

「この世界の人間には精霊が見えるのか?」


「いえ。精霊が姿を現そうとしなければ見えません。ですが、この世界には魔力がありますからね。人間は精霊が実在する事を知っているのです。あちらの世界には魔力や神力が無い為に精霊を信じる心が薄れていったのでしょう」


「……この世界の精霊は幸せね」


「それは違います。この世界の精霊も苦しんでいるのですよ。生きるという事には苦痛が伴います。日々傷つきその傷口が塞がる前にまた新たな傷を負う。その繰り返しが生きるという事なのです。耐え難い傷に苦しみながらも前を向き生きようと思えるのは、そこに愛しい者達がいるからではないでしょうか」


「……愛しい者達」

「そうね。わたし達も向こうの世界の生き物達を愛しているわ」

「だが、我々は愛しい者達を置いてこの世界に来てしまった」

「我らはあの世界と共に滅びようと考えていたのに」


「それはいけません。人間と精霊とは適度に距離を置かねばなりません。違う種族同士は密に関わってはいけないのです」


「だが、我らはあの世界の人間達を守る為に存在してい……」


「本当にそれが正解でしたか?」


 ベリス王が精霊の言葉を遮ったね。

 さっきまでの作り笑顔も消えているよ。


「正解……?」


 精霊が声を絞り出しながら険しい顔になったけど……

 いつものベリス王とは様子が違う?

 少し怒っているような感じがする。


「結局人間は精霊の存在を忘れ好き勝手やったのでしょう。大地を傷つけ生き物が住めない土地にした。違いますか?」


「……それは」


「何度もやり直す機会を与えたのにそれを無視して自ら破滅への道を進んだのです」


「……それは……そうだが……」


 精霊が苦しそうな表情をしている。

 ベリス王はこんな事を言うタイプじゃないのに。

 でも、腹を立てている相手は精霊じゃなさそうだ。

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