大好きな第三地区(5)
亡くなった魔王が、群馬のお父さんだったと知ったのもこの頃だったよね。
お父さんは、いずれ転移してくるわたしの為にこの世界の戦を終わらせたんだ。
でも……
マンドラゴラの一人がお父さんだったのを知った時には驚いたよね。
他のマンドラゴラが吉田のおじいちゃんと野田のおじいちゃんとおばあちゃんだったのも驚いたよ。
その頃ベリアルにも出会えたんだよね。
ベリアルは初めて会った時はピーちゃんを苦しめた悪い奴だと思っていたけど、天界で誰からも愛されずに利用されて追放されたかわいそうな天族だったんだ。
今ではかわいいヒヨコちゃんの姿になって皆から大切にされてすごく幸せそうだよね。
じいじが天族のハデスだって知った時は驚いたけど……
わたしの魂が遥か昔、ハデスの妻だった事を知ってからはハデスの愛を信じられなくなったんだ。
ルゥじゃなくてルゥの中に妻を見ているんじゃないかって疑って……
でもハデスはそんなわたしを優しく包み込んでくれたんだ。
わたしが神の娘だった事を知ったのも、この頃だったよね。
遥か昔にあった色々な出来事も知らされたんだ。
ブラックドラゴンのおじちゃんが神様で、恋人のイナンナの神力だった『ばあば』を守っていて……
ブラックドラゴンのおじちゃんは遥か昔イナンナを追放した悪い大天使を大量に自害させたんだ。
そして天界を追放されたおじちゃんは『ブラックドラゴンのおじいちゃん』としてこの世界で暮らす事になったんだよね。
しばらくして、ペルセポネが自害じゃなかった事が分かって。
消滅したと思っていた身体をファルズフが冥界に隠していると知ったハデスが乗り込んで……
取り返した身体に魂を戻して、わたしは完全なペルセポネに戻れたんだ。
それからルゥのお兄様が苦労していると知ってアカデミーに通い始めたんだよね。
それまでは人間を好きじゃなかったけど、わたしは人間を大好きになったんだ。
でもわたしは神様の娘だから人間と深く関わる事はしない方がよくて。
卒業よりかなり早くアカデミーを辞める事は寂しいけど……
身分制度に立ち向かおうと頑張る人間を離れた場所から応援しようって決めたんだ。
十年後も百年後も千年後も……
大好きな皆の子孫をずっとずっと見守り続けるって決めたんだ。
でも、なんだかんだでベリス王の商売の手伝いをさせられるからまた皆に会える事になったんだけどね。
深く関わり過ぎないように気をつけないといけないけど、やっぱり皆に会えるのは嬉しいよ。
そして今……
ピーちゃんが第三地区に帰ってきた。
これからは大好きなおじいちゃんとお母さんと一緒にいられるんだね。
本当の家族とずっと一緒に……
「ふふ。ペルセポネ」
……え?
人化したばあばが話しかけてきたけど……
翼がある?
それに、いつもはぺるみって呼んでいたはずなのにどうしたのかな?




