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大好きな第三地区(3)

「ピーちゃんも聞いたんだね。そうなの。もう向こうの世界とは完全に関わらなくなるんだよ」


「……ソウ。カナシイケド……ソウシナイト、イケナインダヨネ」


 ピーちゃんが悲しそうに話しているね。


「うん。それぞれの世界に生きる者達で、その世界を守らないといけないんだよ」


「ルーチャンハ、ツヨク、ナッタネ」


「色々あったから……不思議だね。陽太お兄ちゃんとわたしが異世界で暮らすようになるなんて」


「ソウダネ。アノトキ……ボクハ、シュウラクデ、ルーチャンヲ、マモレナイ、クライ、ムリョク、ダッタ。ナニモ、デキナイ、ジブンガ、イヤニ、ナル、クライ、クヤシ、カッタ。サッキモ、ルーチャンノ、シンリョクヲ、イッパイ、ツカッテ、イタイ、オモイヲ、サセテ、ゴメンネ」


「そんな事はないよ。群馬でおばちゃんが夢遊病だった時もすごく心配してくれて……本当に感謝しているの。それに、わたしの身体を作る為に皆を巻き込んだ事が申し訳なくて……」


「ルーチャンノ、セイジャ、ナイヨ。ソレニ、ボクハ、マタ、ジイチャント、オカアサント、クラセテ、ウレシインダ。ボクハ、ズット、カゾクニ、アイタカッタ、カラ」


「この世界で勇者になって亡くなって、赤ちゃんに憑依してまた勇者になってを繰り返していた時の心の支えが『家族』だったんだね」


「コノセカイノ、ハハオヤハ、イツモ、ボクヲ、ツキハナシタ、カラ……」


 ピーちゃんは、この世界ではずっと辛かったんだね。


「ピーちゃん……あ、そうだ。聞きたくないかもしれないけど……」


 話しておいた方がいいよね?


「ン? ナニカナ?」


「ピーちゃんが勇者だった時、掛け算のやり方を聞き出してきた人間がいたでしょ?」


「ウン……ボクハ、カケザンノ、ヤリカタヲ、ハナシタ、アトニ、コロサレタンダ」


「辛い事を思い出させてごめんね。でも、どうしても話したくて」


「……? ウン?」


「その時の人間は聞き出した掛け算を本にしたの。その子孫の女の子がアカデミーにいてね。色々話したんだけど……この世界の人間は掛け算がなんだか分かっていなかったの。どうしてそうなるのかとかを分からずにいてね。その子孫の女の子は、偉大な先祖の存在に苦しんでいたの。自分は先祖とは違ってバカなんだって……」


「……ソウ」


「わたし、思ったんだ。その先祖は偉大なんかじゃないって。勇者殺しの犯罪者で、掛け算だってピーちゃんから聞いたものをそのまま本にしただけのただの愚か者だって……でも、言えなかった」


 あの純粋で真っ直ぐな瞳を見たら傷つけそうで言えなかったんだよ。

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