ふざけているように見えて、実は立派なのかもしれない人っているよね
おばあちゃん達が忍者になって現れるなんて思ってもいなかったから、この先をどう話したらいいか分からないよ。
どうしよう。
昨日皆で考えた魔素で閉ざされていた国名は確か……
モンジャヤキタコヤキスルメイカリントウ……えっと、なんだっけ?
皆が好きな食べ物を全部入れたから覚えきれないんだよ。
あれ?
なんだっけ?
モンジャヤキタコヤキ……
あれ?
「その通りです! 魔素で閉ざされていた国『黄金の国ニホン』の姫様なのです!」
吉田のおじいちゃん!?
ありがとう。
黄金の国ニホンか……
短い国名で助かったよ。
「黄金の国? ニホン? 聞いた事が無いな」
「遠いのか?」
「黄金の国っていうくらいだから金でキラキラしているのか?」
「黄金の家で暮らしてみたいもんだな」
市場の皆は国中が金ぴかだと思っているのかな?
実際ニホンは無いんだけど。
黄金の家か……
魔族のヴォジャノーイ王国のお城は金ぴかで目が疲れたよね。
ヴォジャノーイ王も目が疲れるからって普段は質素な家で過ごしているらしいし。
「いや……黄金の家は目が痛くなるんだよ。壁も床も全部金だと目が疲れるんだよ? 普通が一番いいよ?」
「おお! やっぱり全部黄金でできてるのか!」
「すごいな! 魔素で閉ざされていたから誰からも奪われなくて豊かだったのか?」
「羨ましいなぁ」
市場の皆……
本当に目が痛くなるんだよ?
驚くくらい痛くなるんだよ?
「姫様は幼い頃から金塊を積み木代わりに、浴槽も金でできた物を使っていました。ニホンはとても豊かで、王族は民の見本となるべく日々を過ごしています」
吉田のおじいちゃん……
よくそんな嘘をスラスラと。
言葉づかいも丁寧だし。
それに積み木が黄金って、赤ちゃんには重くて持てないでしょ?
「王族が民の見本?」
「搾取するんじゃなくて?」
「リコリスだって今はだいぶ住みやすくなってはきたけど、貴族は威張っていて見本なんてとんでもないぞ?」
お兄様が王になってからだいぶ良くなったんだね。
お兄様は頑張っているんだ。
でも、貴族はそんな簡単には変われないよね。
「ニホンではどんなに偉い身分でも誰かを殴れば捕らえられるんだ。例えば、貴族が平民を殴った時と、平民が貴族を殴った時の罪は同じなんだ」
吉田のおじいちゃん?
もしかして、市場の人間達に教えてあげたいの?
身分によって罪の重さが変わるのも、平民が貴族の横暴に耐え続けるのもおかしい事だって。
でも、大丈夫なのかな?
前の世界でも、偉い人達の横暴な態度に怒った国民が暴動を起こしてたくさんの死者がでた事があったよね?
市場の人間達を煽るような事は良くないよ?
いつも真っ先に亡くなるのは弱い民なんだから。
「身分なんて関係無く誰でも学校に行けるんだ」
日本の話をしているんだね。
義務教育の事か。
「ガッコウ?」
「この世界じゃ、アカデミーって呼ぶ所だなぁ」
吉田のおじいちゃんは、すっかりいつも通りの話し方に戻ったね。
猫をかぶり続けるのは難しいよね。
「誰でもアカデミーに行けるのか?」
この世界の人間にとっては難しい事だから信じられないよね。
「七歳になる年から十五歳までは皆アカデミーに通っているんだ。それは法で決められているからなぁ」
「皆アカデミーに? すごいな」
「そんな国があるのか」
「今、このリコリス王国も変わり始めてるみてぇだなぁ。若い王様が頑張ってるんだろう? 平民もアカデミーに入れるようになったし、無料で字を覚える為の絵本を配ってるみてぇだし」
え?
お兄様がそんな事を?
吉田のおじいちゃんはなんでも知っているんだね。
さすが初代の神様だね。
「いつか、このリコリス王国も皆がアカデミーに通えるようになるかもなぁ。今すぐには無理かもしれねぇけど、今の王様は皆が住みやすくなるように頑張ってるからなぁ」
……吉田のおじいちゃんはお兄様が頑張っている事を皆に分かってもらいたかったのかな?
市場の人間達には想像もできないような、皆が平等で誰からも虐げられない世界があるって知って欲しかったのかな?