ペルセポネとベリアルと霧の森(8)
「ふふ。そうよ。ペルセポネは元気そうね。うさちゃんは、いないの?」
本当にイナンナなんだね。
「イナンナ……わたし……ずっとずっと謝りたかったの……」
「その話は後で聞くわ。ペルセポネ……今はあの子の話を聞きましょう?」
「あの子……? ピーちゃんの事……?」
「ボク、タチハ、モウ、カエラナイト、イケナインダ。アノ、セカイニ……ダカラ……コレカラハ、コノ、セカイニ、イキル、ミンナデ、コノ、セカイヲ、マモラ、ナイト、イケナインダ! ボクタチ、ムコウノ、セカイニ、イルベキ、ソンザイハ、カエラナイト、イケナイカラ」
……ピーちゃん。
その言い方だと今すぐ向こうの世界に帰る事になっちゃうよ。
イナンナ達はあと一年はこの世界にいるつもりなのに……
この世界の精霊達も、向こうの世界に帰る事になるのかな?
どうしよう。
「アルベキ、スガタニ……イルベキ、バショニ……モドルンダ!」
……!?
身体がフワフワする。
それと同時に関節がギシギシ音を出す。
「うう! 痛い!」
わたしの神力がピーちゃんに流れ込んでいるのが分かる。
身体が、ちぎれそうなくらい痛い……
「ぺるみ! 大丈夫か!? うわあぁ! 身体が浮かんだ!」
ベリアルの慌てている声が聞こえてきたけど……
うつ伏せに倒れたまま動けないから何も見えないよ。
「ベリアル……大丈夫!?」
うわ!
わたしも身体が浮かび始めた!?
でも、それよりも身体中が痛いよ。
身体がフワフワ浮かんでいるけど……
……って!
「痛ああぁぁぁあい!」
腰くらいの高さから落ちた!?
重力を感じるよ。
ただでさえ痛い身体が、さらに痛む……
……?
あれ?
ここは……
冥界の寝室?
夢……
だったのかな?
ベットから落ちたから変な夢を見た……とか?
……!?
絶対夢なんかじゃないよ!
身体がちぎれそうなくらい痛いっ!
「うぅ……」
ベットの下に、うつ伏せのまま倒れて動けない。
「ン……? ペルセポネハ、カエッテ、キタノカ」
うさちゃんが、ベットの上からわたしを見つめている?
「うさちゃん……帰ってきたって何? うぅ……身体が痛いよ」
「アイツガ、ムカエニ、キタ。ネテイル、ペルセポネヲ、グンマニ、ツレテ、イクト、イッテイタ」
「あいつって……吉田のおじいちゃんだよね?」
「ソウダ」
「やっぱり夢じゃなかったんだ」
じゃあ、さっきまでの事は全部現実?
『真実の口』の力が、ピーちゃんの願いを叶えたのなら……
ピーちゃんやイナンナの魂、それからばあば達も『人間と魔族の世界』に帰って来ているっていう事だよね?
でも、どこに?
ドラゴンの島?
やっぱり吉田のおじいちゃんがいる第三地区かな?
行かないと。
第三地区に行かないと!
でも……
身体が痛くて動けないよ。




