ペルセポネとベリアルと霧の森(7)
「頑張って! 陽太お兄ちゃん! 絶対に願いは叶うから!」
陽太お兄ちゃん……
勇者として異世界の『人間と魔族の世界』を救ったように、今度はこの世界を救う勇者になるんだね。
「ボクハ……ボクガ、コノ、セカイデ、イキテ、イタ、トキ、ミタイニ……アオク、キレイナ、ソラ。カワアソビ、デキル、ホド、ウツクシイ、ミズ。ハナガ、カワイク、サイテ……ミンナガ、エガオデ、クラセル……ソンナ、セカイニ、モドッテ、ホシカッタ、ノニ……」
陽太お兄ちゃんが心からこの世界を大切に思っている気持ちが伝わってくる。
わたしもこの世界が大好きだよ。
この集落が大好きだよ。
春には集落のお祭り、夏には川遊びをしたり農作物を収穫して、秋はお月見、冬は雪かきが大変だって言いながらこたつでミカンを食べていたよね。
「わたしも……陽太お兄ちゃんと同じだよ。この集落が大好き。ずっとずっと皆に幸せに暮らして欲しいよ。だからお願い……陽太お兄ちゃんの願いを叶える為に……わたしの従魔の願いを叶える為に……わたしの力を使って! わたしの無限に近い力を! 違うね。わたしの従魔の名前は『陽太お兄ちゃん』じゃない。ピーちゃん! わたしの従魔! あなたの願いはわたしの願いだから! お願い……わたしの神力……ピーちゃんに届いてえええ!!」
……!?
うぅ……
身体の芯が熱い。
うわ……
関節から音がビシビシ聞こえてくる。
身体中が痛い……
立っていられなくて倒れ込んじゃった。
わたしの神力がピーちゃんに流れているの?
地面にうつ伏せに倒れたまま動けないよ。
あれ?
さっきまでは草すら生えていなかったのに、倒れている目の前に緑色の芽が出てきた?
ピーちゃんの言葉が現実になろうとしているの?
「ぺるみ……大丈夫か? おい! しっかりしろ!」
ベリアルの声が頭に響く。
痛たた……
お願いだから、静かにして……
「おい! ぺるみ!」
ベリアルのパンみたいなかわいい翼がわたしの頭をペシペシ叩いている。
普段だったらグフグフ言いながら喜ぶところだけど……
今は、やめて。
頭が割れそうなくらい痛いんだよ。
「ぺるみ! 死ぬなあああ!」
いや、死なないから。
ちょっと……
それ以上叩かないで……
「うわあぁ! ぺるみが死んじゃったよぉぉぉ!」
だから、生きているってば……
だれか、ベリアルの大声と頭を叩いている翼をとめて……
「あらあら。ふふ。ペルセポネなのね?」
……え?
「それから、あなたはベリアル? ずいぶんかわいい姿になったわね」
この声は誰?
わたしとベリアルの姿は誰にも見えないはずなのに。
それに、わたし達の名前を知っているなんて。
うつ伏せに倒れているからよく見えないけど、まさか……
「イナンナ……?」
イナンナの魂が集落にいるって、ばあばが話していたけど……
本当にイナンナなの?




