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ペルセポネとベリアルと霧の森(4)

 集会所に明かりがついている。

 でも、電気じゃないみたいだね。

 揺らいでいるからロウソクなのかな?

 中から声が聞こえてくるけど、よく聞こえない。

 窓に耳をつければ聞こえるかな?

 

「陽子ちゃんも寂しい最期だったなぁ」

「陽子あんねえは良かったんさ。こんな暮らしを長くしなくて済んだんだからなぁ」

「そうだなぁ。核のせいで世界中がこんな事になっちまってなぁ」

「子供も産まれなくなって……もう、世界が終わるのを待つだけになっちまった」


 ……え?

 核?

 核兵器の事だよね?

 まさか……

 戦争!?

 それに、寂しい最期って……

 そんな……


「ぺるみ……大丈夫か? 身体が震えてるぞ?」


 ベリアルがバスケットの中から心配そうにわたしを見つめている。


「……ベリアル。陽太お兄ちゃんのお母さんが……亡くなったみたい」


「……!? そんな……ヨータはどこにいるんだ!?」


「分からない……でも……」


 ……!?

 何!?

 すごい音が聞こえてきた!?

 耳が痛い……

 それだけじゃない。

 空気が振動している。

 これは……

 ドラゴンの姿のばあばの叫び声!?

 一体どうなっているの?


「おい。これってホワイトドラゴンの声だよな?」


 ベリアルも気づいたんだね。


「うん。でもどうしてこの世界でドラゴンの姿になって叫んでいるの!?」


「分からない……でも……あれを見てみろ」


「あれって? あ!」


 ドラゴンの姿のばあばが、空に浮かぶ巨大なモニターに映し出されている!?

 何これ……

 一体何をしようとしているの!?


「世界を傷つけ己の欲を満たし、死にゆくだけの愚か者達よ……」


 ……!?

 ばあば!?

 モニターに映るばあばがいつもよりかなり低い声で話している。

 ばあばの声で空気が振動しているけど……

 これって演出だよね?

 ブラックドラゴンのおじいちゃんの神力を感じるよ。


「この世界は、もうすぐ生き物が住めなくなるだろう。全てはお前達の欲のせいだ……だが……わたしは……この世界が愛おしくてならない。全ての人間が身勝手に大地を傷つけているわけではない事も知っている」


 ばあば……

 この世界を助けようとしているの?

 ばあばは時間を止める神力を持っているけど……

 その力で世界を滅亡の危機から救おうとしている……とか?

 そんな……

 いくら、ばあばでもそんな事をしたら死んじゃうよ。

 この世界は大きいんだ。

 ばあばの神力だけじゃ無理だよ。

 ……まさか、集落にいるイナンナの魂にブラックドラゴンのおじいちゃんを譲ろうとしているの?

 そんなのダメ!

 イナンナは大切な友達だし、ばあばは大切な家族なんだよ。

 二人とも消えないで欲しい。

 無理なのかもしれないけど……

 でも……

 ばあばにもイナンナにも幸せになって欲しいんだよ!


 集会所に集まっていた集落の皆が、ばあばの声を聞いて外に出てきたね。

 あ……

 おじいさんとおばあさんの後ろに、二十歳くらいの男の子が見える。

 この子は……

 わたしが溺死した時に助けた子だ。

 あの頃とは顔も背丈も全然違うけど、お父さんにそっくりに成長したんだね。

 

 あぁ……

 生きていたんだ。

 良かった……

 本当に良かった。

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