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ペルセポネとベリアルと霧の森(1)

 ん……?

 もう朝?

 今は何時くらいかな?

 時計は……

 あれ?

 変だな。

 昨日は冥界でハデスとうさちゃんと川の字で寝ていたはずなのに。

 どうして森の中にいるの?

 それに、疲れてワンピースのまま寝ちゃったはずなのに赤ずきんちゃんみたいな服を着てバスケットを持っているよ。

 夢を見ているのかな?

 ほっぺたをつねってみよう。

 痛たたた……

 夢じゃなさそうだね。

 じゃあ、現実?

 

 ……あれ?

 この甘い匂いは……

 バスケットの中に焼きたてのクッキーとパンが入っている。

 このクッキーの形……

 間違いないよ。

 吉田のおじいちゃんが作った物だね。

 ソフトクリームのアイスの部分の形をしている。

 あっちの方の形だとは考えたくないよ。

 まったく……

 こんなクッキーを作るのが初代の神様だなんて。

 

 それにしても、ここはどこ?

 森の中にいるのは分かるけど、霧がすごくて遠くが見えないよ。

 道に迷った時はその場から動かない方がいいんだよね?


 ん?

 何かが霧の中でちょこちょこ動いている。

 なんだろう?


 ……!

 あれはベリアル!?

 ぐふふ。

 森の中にいるヒヨコちゃんも超絶かわいいよ!

 後ろからそっと近づいて取っ掴まえて吸っちゃおうかな。


 気づかれないようにゆっくりね。

 よぉし!

 掴まえた!


 ……あれ?

 ベリアルだと思ったらぬいぐるみか。

 でも、かわいいから幸せの島に持って帰ってコレクションに加えよう。

 ぐふふ。

 ぐふふふ。

 なかなか良い肌触りだよ。

 でも、普通のぬいぐるみなのにどうして動いていたんだろう。


 ん?

 やっぱり何かがちょこちょこ動いている?

 うーん。

 ベリアルだと思うんだけど。

 あんなに速く動けるの?


 よし!

 今度こそ掴まえるよ!


 先回りして……

 ふふふ。

 木の陰に隠れているね。

 今度こそ掴まえた!


 あれ?

 またぬいぐるみか。

 ぐふふ。

 肌触りが最高だね。


 でも……

 変だね。

 夢でもなさそうだし。

 ここはどこなんだろう?


 ……しまった。

 ベリアルに夢中で動き回っちゃったよ。

 うーん。

 これは完全にまずい状況だよね。

 迷った?

 っていうより、ここはどこなんだろう?

 でも大丈夫!

 わたしは空間移動ができるんだから。

 よし。

 じゃあ、早速……

 あれ?

 あの木陰でうずくまっているのは……

 今度こそベリアルかも!

 あ……

 小さく震えている?

 ベリアルは怖がりだから……


「ベリアル……だよね? 大丈夫?」


 いきなり吸いついたら驚かせちゃうよね。

 今は、やめておこう。


「え? ぺるみ? 本当にぺるみか?」


 やっぱり本物のベリアルだね。


「うん。ここは、どこなんだろう。目が覚めたら森の中にいて驚いたよ。しかも明らかに吉田のおじいちゃんが作ったパンとクッキーを持っているし」


「え? パンとクッキー!? 食べたい! 腹ペコなんだ!」


「ふふ。もう冷めちゃったかもしれないけど。って、あれ? まだ熱々だね」


「ん? 熱々? できたてなのか?」


「ううん。もう五分くらい経っているのにずっと熱々なの」


「……? それは変だな。でも、まぁいいや。じいちゃんが作ったなら絶対旨いぞ!」


「うーん。それはそうなんだけど……とりあえず、どこかに座って食べようか」  


「そうだな! えへへ。甘い匂いがする!」 


「うん。飲み物がないから喉につかえないように気をつけてね」


「分かった! えへへ。いただきますっ! モグモグ……うまあぁぁぁあい!」

 

 ベリアルがご機嫌でパンとクッキーを食べているね。

 それにしても、不思議な空間だよ。

 吉田のおじいちゃんが創り出したんだろうけど……

 どうしてわたしとベリアルしかいないんだろう?

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