レアーおばあ様とペルセポネ(5)
「……わたしは……苦しくないようにお父様が意識をなくしてくれたから……だから溺れた苦しみを知らずに済んだの。自分が死んだ事すら気づかなかったし」
「……そう」
おばあ様が辛そうな表情をしているね。
「でも……わたしが溺死した少し前に、おばあちゃんが魔素であんな風に亡くなって……わたしは……自分を責めて……ひとりぼっちになった家で……心が空っぽになって……」
「ペルセポネ……」
「その時、思ったんだ。わたしの中でおばあちゃんはすごく大きな存在だったんだって……わたしはおばあちゃんがいないとダメなんだって。甘えん坊でおかしいでしょう? でも……大好きなおばあちゃんがいなくなって一人で残されて……わたしも一緒に死にたいって思って……でも……でも……そんな事をしたらおばあちゃんに叱られちゃうからって……」
「辛い事を思い出させたわね……ごめんなさい」
「ううん。わたしは絶対にあの時の気持ちを忘れたくないの。これから先、ペルセポネとして何千年生きても絶対に忘れない。天族に戻ったら、もう家族を喪う事も無いだろうし……関わった人間達が亡くなった後は、大切な誰かを喪う悲しみを知る事も無いだろうから」
「そう……」
「大切なおばあちゃんを守れなかった無力な自分を……泣く事しかできなかった弱い自分を忘れたらダメなの……絶対に覚えていないといけないの」
「月海は強くなったわね。群馬ではひとりぼっちになって自殺してしまうんじゃないかと心配していたのよ。でも……今は違うわね。その真っ直ぐな瞳を見れば分かるわ」
「おばあ様……」
ずっと野田のおじいちゃんの中から見てくれていたんだね。
「亡くなる時に思う事は皆違うはずよ? でも……彼は残された家族を想っていたわね」
「野田のおじいちゃんが……?」
「陽子一人が残されてしまうから……」
「うん……」
「死にたくなかった……でも寿命には抗えなくて……あの時の彼の心は……不安でいっぱいだったの。陽子がこれからどうなるのかってね……だから、陽太が鳥の姿で群馬に戻ってくれてわたしも安心したのよ。陽子は鳥の姿の陽太に『ぴよ太』と名づけてそれは大切にしているのよ」
「そうだったんだね……」
「ペルセポネは覚えているかしら。陽太がハーピー族長との従魔契約を解消した後にルゥの従魔になった事を……」
「え? あ……そうだったね。でも、あれはもう解消されたんじゃないのかな? ピーちゃんは聖獣シームルグだったわけだし……ん? 聖獣なのに従魔契約……?」
そんな事ができるのかな?
「あぁ……それはベリアルが関係しているのよ」
「ベリアルが?」
何か特別な事をしたのかな?
おばあちゃんが亡くなった時のお話は
『異世界で、人魚姫とか魔王の娘とか呼ばれていますが、わたしは魔族の家族が大好きなのでこれからも家族とプリンを食べて暮らします。~ルゥと幸せの島~』
おばあちゃんの最後の日
掲載日2022/10/03 13:16 (102話)
に書いてあります。




