レアーおばあ様とペルセポネ(4)
「できるのかな? 魔力も神力も無いのに……」
あの世界の人達だけであの世界を救う事は、かなり難しいはずだよ?
「生きる為に方法を見つけるはずよ。あの世界の人間は賢いから……」
おばあ様が優しく微笑みながら話しているけど……
「信じるしか……ないんだね」
「きっと、陽太達が一歩だけ前に進ませてくれるはずよ」
「一歩だけ前に?」
「あの世界を変えられるのは、あの世界に暮らす者達だけだから」
「おばあ様は、傷ついたあの世界が元に戻ると思うの? もう取り返しのつかないところまで来てしまったのに」
「わたしは思うの。全ての事に意味があるのよ。なんて事ない日常が後になって何かと繋がってくる……そんな風にね」
「……? よく分からないよ」
「ゼウスが群馬のある世界に行った事も、身体から変な物を創り出す事も。陽太が勇者としてこの世界に来てまた群馬に戻った事も、全てに意味がある……だから、わたし達は信じて待ちましょう?」
「おばあ様……」
おばあ様は未来を知っているみたいに話すんだね。
「陽太、ドラゴン王とブラックドラゴン、イナンナを信じて待ちましょう。そして、あの世界の人間が変わる事を信じましょう。二度とあの世界が傷つかないように……次はもうないんだから」
「……次はもうない?」
「ペルセポネ?」
「……うん?」
おばあ様が真剣な表情になったね。
大切な話なのかな。
「陽子が……もう長くなさそうなの」
「……え! そんな……」
「わたしも彼の中から陽子を見守ってきたから悲しいわ。実の娘のように思っていたのよ……」
「集落の皆は長生きなのに……早過ぎるよ」
「陽子は、息子と父親を亡くしてから体調が優れなかったのよ。陽太が鳥の姿で支えているけど、自分が陽太だとは名乗れないし……」
「そうだよね……」
「陽子が亡くなったら魂だけを連れてくるのよね。そうなれば陽太も帰ってくるわ」
「……うん」
「魂を選別するみたいで辛いわね。月海が亡くなってからは、あの集落で亡くなった人達の魂がこの世界に来る事はなかったから」
「わたしの魂が入れる身体を作る為に巻き込んでしまった集落の皆に申し訳ないよ……」
「その事を第三地区の皆は恨んだりしていないわ」
「おばあ様……」
「最後に連れてくる事ができる魂は陽子……それも納得してくれているわよ」
「でも……自分の子供の魂がこの世界に来られないのに……納得なんてできるはずないよ」
「第三地区の皆は一度亡くなっているから……その時に別れる覚悟をしていたのよ」
「……え?」
「ペルセポネは月海として亡くなる前に何を思ったの?」
わたし……?
群馬で溺死した時の事だよね?




