威張り過ぎると周りに誰もいなくなっちゃうから気をつけようね?
「じゃあ、皆よろしくね? 坊っちゃんを音が聞こえない空間から出すよ? あ、そうだ! 坊っちゃんの目の痛みは治さないから、皆も痛い振りをしてね?」
散々悪さをしたんだから、これくらいはしないとね。
「あはは! そりゃいいな!」
吉田のおじいちゃん……
復活したんだね。
これに懲りたらもう竜巻の中に入らないんだよ?
「うう……なんだったんだ? まだ目が痛い……」
坊っちゃんは状況説明が分かりやすくていいね。
なるほど、まだ痛いんだね。
よし!
少し遊んじゃおうかな?
「ウウ! メガ、イタイヨ!」
わざとカタコトにしてみたよ?
「ぷはっ!」
吉田のおじいちゃんが吹き出したね。
さぁ、皆で楽しもう!
「あぁ……目が……痛いだす! あ! です!」
坊っちゃんの真面目そうな護衛の一人が……
『だす』って言った……
「「ぷはっ!」」
吉田のおじいちゃんと同時に吹き出しちゃった。
わたしのこういうところは、おじいちゃんに似たのかな?
「うわあぁ! 目が痛いよぉ! 誰か助けてくれぇ!」
「目が飛び出しそうなくらい痛いよぉ!」
「イタイヨ、イタイヨ!」
おぉ……
わたし以上のカタコトが一人いるね……
ってあの人間は市場の相談役!?
ちょっと待って!?
伯爵家相手に演技をするんだよね?
大丈夫なの!?
不安になってきたよ……
「目が痛い! 今日は帰るぞ!」
なんだ。
坊っちゃんはもう帰っちゃうんだ。
残念だな。
「平民は貧乏で医者にも診てもらえないからな。ははは! 残念だな!」
おぉ……
坊っちゃんは本当に残念だね。
今、目が痛いのは坊っちゃんだけなのに。
「あ! 坊っちゃん!」
本人の前で坊っちゃんって呼んじゃった。
怒るかな?
「なんだ。やっぱり王族なんて嘘なんだな? 父上に頼んで捕まえさせるからな!」
「え? あぁ……そうじゃないんだけど……坊っちゃんはアカデミーの普通科なんでしょ?」
「そうだ! わたしは伯爵家の立派な……」
面倒だから途中で遮っちゃお!
「何年生なの?」
同級生かな?
「お前……! 今遮ったな!?」
「坊っちゃんはバカだから留年してずっと一年生かな?」
「はあ!? バカって……貴族をなんだと……」
本当に面倒だね。
また遮っちゃお。
「じゃあ二年生?」
「そうだ! 留年なんかしてないからな!」
「ふぅん。じゃあ十五歳なんだね? わたしもだよ?」
「……まだ誕生日がきていないから、十四歳だ」
「え? じゃあわたしの方がお姉さんだね!」
「はあ!? 身分はわたしの方が高いぞ!」
「あぁ……はいはい」
「今、軽く流しただろ!」
「ん? はいはい」
「お前! 不敬罪で捕まえさせるからな!」
「……じゃあ捕まるのは坊っちゃんだね」
「え? 本当に王族なのか? そんなはず無いか……」
「坊っちゃん。わたしも明日からアカデミーに通うからね! よろしく!」
「……はああ!? まさか、本当に王族なのか!? いや、平民でも入れる普通科以外の学科だろ?」
「ふふ。それは明日のお楽しみだよ!」
「はあ!? お前の相手は疲れた……帰るぞ」
坊っちゃんが護衛の二人に話しかけている。
馬車に乗り込んだね。
「じゃあね? 坊っちゃんまた明日!」
よし。
馬車の中だけど聞こえたよね?
じゃあ、わたしも蚕の所に行こうかな?
その前に、疲れたからベリアルを吸ったらにしようかな。
今のわたしには癒しが必要だよ。