吉田のおじいちゃんはずっとご機嫌だよね
「ちょっと! 見世物じゃないんだよっ!」
大きめのワンちゃんみたいな聖獣をがっつり吸っているところを、おばあちゃんと吉田のおじいちゃんに見られちゃったよ。
「ぷはっ! 見世物……ははは!」
吉田のおじいちゃんが嬉しそうに笑っているね。
おばあちゃんは呆れているみたいだ。
「だって、かわいいんだもん! 吸いたくなっちゃうんだもん!」
恥ずかしいから、つい大声になっちゃうよ。
「そうか、そうか。それで? ハデスちゃんとデメテルはレアーの宮殿の中か?」
吉田のおじいちゃんは、ずっとニコニコしているね。
ん?
レアーって誰かな?
「レアー?」
「ははは! そうか、ぺるぺるはレアーの名を知らなかったんか」
「おばあ様はレアーっていう名前なの?」
「そうだなぁ。じいちゃんとお月ちゃんのかわいい娘はレアーだなぁ」
「おじいちゃんとおばあちゃんは、おばあ様に会いに来たの?」
「んん? うーん……じいちゃん達はぺるぺるが聖獣を吸いながらニヤニヤする姿を見に来たんだ。レアーには陽吉越しに毎日会ってるからなぁ」
「おじいちゃん達も野田のおじいちゃんの中におばあ様の魂が少しだけ入っていた事を知っていたんだね」
「じいちゃんは群馬にいた頃は分からなかったけどなぁ。お月ちゃんは気づいてたみてぇだなぁ。さすがは母親だ! ははは! 母親だけに『ははは』ってか?」
「吉田のおじいちゃんは、ずっと楽しそうだね……」
「ぷはっ! さっきのぺるぺるの聖獣吸いもなかなかおもしろかったぞ?」
「もう! 笑わないの!」
ん?
おばあちゃんは真顔だね……
これは怒る一歩手前の顔だよ。
おばあちゃんには少し笑って欲しいよ。
「ぷはっ!」
「あ! おじいちゃんは、またわたしの心を聞いたんだね? 笑わないの!」
「ぺるぺるは、かわいいなぁ。ははは! この聖獣を気に入ったんか?」
「うん! すごくかわいいよね。『キュウゥン』っていう声がかわい過ぎるよっ!」
「ははは! そうか、そうか。さすがぺるぺるだなぁ。もう、聖獣王を懐柔したんか」
「聖獣王が怪獣した?」
よく分からないよ。
聖獣王は怪獣なのかな?
「んん? ははは! ぺるぺるは群馬じゃ勉強が苦手だったからなぁ。ずっと天ちゃんと遊んでたからだぞ?」
「うぅ……」
確かに、棒切れを持って山を駆け回っていたけど……
あぁ……
怖くておばあちゃんの顔を見られないよ。
群馬では毎日のように勉強しろって怒られていたからね。
「ぷはっ! ぺるぺる? じいちゃんは聖獣王が怪獣じゃなくて、聖獣王を手懐けて言う事を聞かせたんかって言ったんだ」
「……? 聖獣王を手懐けた? わたしが?」
聖獣王って聖獣の王様って事だよね?
え?
じゃあ、このかわいいワンちゃんが聖獣王!?
「ははは! そうだ。このかわいいワンちゃんが聖獣王だ!」
「え? え? でも、どうして番犬みたいな事をしているの!?」
おばあ様の宮殿の入り口で寝ていたよ?
「ははは! 番犬か。そりゃ、違うなぁ。ここにいりゃ、デメテルとヘスティアとヘラが旨い物を食わせてくれるからだぞ?」
「……え? そうなの?」
聖獣王が餌付けされているっていう事?
それって威厳的な事は大丈夫なの?




