モフモフを見たらつい吸いつきたくなるのが正常な変態だよね?
「ハデスは、お母様の宮殿は初めてだったかしら? あの戦の後すぐに冥界に行ってしまったものね」
「そうだな。これが母上の宮殿か」
お母様とハデスが感慨深そうに話しているね。
もう少し黙っていようかな?
それにしても大きな宮殿だね。
戦の功績が認められたとか言っていたし、それでもらった宮殿なのかな?
おばあ様は身体の弱かったわたしの為に、毎日のようにお母様の宮殿に来てくれていたからね。
だから、わたしがおばあ様の宮殿に行った事は無かったんだ。
「ふふ。素敵な宮殿でしょう? さ、入りましょう」
「……そうだな」
お母様とハデスの後ろをゆっくり歩いていくと……
うわあぁ!
聖獣だ!
かわいいなぁ。
大きい犬みたいな聖獣が入り口で眠っている。
ん?
高級そうなベットを使っている。
フカフカで気持ち良さそうだよ。
ふふ。
うさちゃんが見たら欲しがりそうだね。
撫でてもいいかな?
吸ってもいいかな?
「あらあら。ふふ。ペルセポネは聖獣と遊びたいのかしら?」
お母様がニコニコ笑いながら話しかけてくれたね。
「うん! かわいい聖獣だね!」
「ふふ。ここで聖獣と遊んでいるといいわ。その子は門番をしたがってね。でも、誰とでも遊んでしまって全然門番にならないのよ。かわいいでしょう?」
「うわあぁ! そうなんだね。じゃあ、ここで待っているよ」
わたしが中に行くとハデスがお母さんに甘えられないかもしれないからね。
お母様もそう思ったから、わたしと聖獣を遊ばせようとしているんだろうし。
あれ?
お母様が聖獣にお菓子をあげた?
聖獣の尻尾がすごい勢いで揺れているよ。
「ペルセポネは一人で大丈夫か?」
ハデスが心配そうに話しかけてきたけど……
「わたしは大丈夫だよ。ハデスはお母さんとゆっくり話してきて」
「……そうか。何かあったら中に入ってくるのだぞ」
こうしてお母様とハデスが宮殿に入って、聖獣と二人きりになると……
「ぐふふ。ねぇねぇ。ワンちゃん……ちょっとお腹を上にして寝転んでよ……」
言葉は通じるのかな?
「キュウゥン?」
おぉ……
簡単に言う事を聞いてくれたね。
わたしの言葉が分かるんだ。
「そうそう。上手だね」
「キュウゥン……」
すごい。
ちぎれそうなくらいの勢いで尻尾を振っているよ。
嬉しいのかな?
でも……
キュウゥンしか言えないのかな?
普通の聖獣は話せないとか?
うさちゃんやピーちゃんは話せるけど、普通の聖獣じゃないしね。
「ねぇねぇ。ワンちゃん……ちょっとお腹を吸ってもいい?」
「キュウゥン?」
「吸うっていうのは、こうやってね? 顔をくっつけて深く息を吸うの。こんな風に……スウゥゥゥゥ……」
「キュウウンッ!?」
「ぐふふ。震えているの? かわいいねぇ。初めて吸われたのかな? 警戒しなくていいんだよ? ほら、身を任せて……スウゥゥゥゥ……くうぅ! 堪らないねっ!」
「キュゥゥゥゥン……キュゥゥゥゥン……」
怖くて震えているんじゃないよね?
嬉しくて震えているんだよね?
「……ぺるぺる」
「スウゥゥゥゥ……ハァァァ……スウゥゥゥゥ……」
「ぺるぺる……」
ん?
誰かに呼ばれたような……
気のせいかな?
「スウゥゥゥゥ……」
「ベリアルに、浮気してたってばらすぞ?」
……!?
この声は……
「吉田のおじいちゃん!?」
……と、おばあちゃん!?
いつからそこにいたの!?
あどけないワンちゃんに吸いついている姿を最初から全部見られていたりしないよね?




