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泥棒はダメだけど~後編~

 よし、今度こそ学長とジャックがしている交換ノートを盗……持って帰るよ!


 学生寮のジャックの部屋は、ここだね。

 鍵穴から中を覗いてみよう。

 うん。

 真っ暗だ。

 ふふふ。

 ぐっすり眠っているみたいだ。

 

 じゃあ、ちょっと入らせてもらいますよ。

 でも、空間移動で入ったら眩しくて目を覚ましちゃうよね?

 さっきの学長の部屋みたいに鍵が開いていればいいけど。

 って……

 ジャックの部屋も鍵がかかっていないね。

 もしかして、この世界の人間は鍵をかけないのかな?

 でも、おかげで簡単に部屋に忍び込めるよ。


 静かに扉を開けて……と。

 

 うーん。

 暗くてよく見えないね。

 目が暗さに慣れるまで待たないと。


「……ぐふふ。ヒヨコ様……お尻フリフリ……」


 ……!?

 あぁ……

 寝言か。

 びっくりした。

 ジャックは、すっかり変態になったね。


「……うぅ。ヒヨコ様……ヒヨコ様ぁ……」


 悲しい夢を見ているのかな?

 泣いているね。

 そうか。

 もう明日からはベリアルに会えないから……

 でも、わたしが『洗濯師』なのはジャック達ならすぐに気づくはずだからベリアルも連れてきてあげればいいんだよね?

 明日ベリアルに話してみよう。


 あ、目が慣れてきたね。

 机の上に交換ノートが見える。

 

 ジャック……

 ごめんね。

 このノートは持って帰らせてもらうよ。

 お詫びにジャックが持っているベリアルのぬいぐるみに、わたしが作った貝殻ビキニを着せておくからね。


「ごめんね。ジャック……わたしを赦してね」


 ジャックの部屋から学長の私室に向かう。

 鍵穴から中を覗くと……

 よし。

 真っ暗だ。

 もう眠ったのかな?

 

 こっそり中に入ると……

 あれ?

 お出かけしたのかな?

 部屋には、いないみたいだ。

 でも、部屋にいないのに鍵をかけないなんて大丈夫なのかな?


 今から泥棒をするわたしが言える事じゃないか。


 それじゃあ、交換ノートを持ち帰らせてもらうね。


 お詫びに学長のぬいぐるみにも貝殻ビキニを着せて……と。

 よし。

 学長……

 ごめんね。

 教え子に泥棒されたなんて知ったら倒れちゃうかな?

 どうかショックで倒れませんように。

 ……やっぱり、やめた方がいいかな?

 学長が倒れたりしたら……

 でも……


「本当にごめんなさい……」


 こうして冥界の門の外に空間移動すると、門をくぐる。


 うぅ……

 心が痛むよ。

 返してこようかな。

 でも……

 でも……


 モヤモヤしながら部屋に入ると引き出しを開ける。

 ここに隠しておけば誰にも見られないよね。

 でも……

 本当にこれでいいのかな?

 本当にこれでいいの?

 これは酷い事だよ。

 

 学長もジャックも今頃ノートを捜しているかもしれないよ?

 大好きな二人を傷つけてもいいの?


 手が震えているのが分かる。

 わたし……

 泥棒しちゃったんだ。

 今まで泥棒なんてした事がなかったのに。

 ゴンザレスが言った通り、わたしは犯罪者だよ。

 

 あ……

 ノートが床に落ちちゃった。

 拾い上げると……

 最後のページなのかな?

 片側だけに文字が書いてある。


 変態のわたしの姿が書いてありそうで、怖くて読めないよ……

 でも……

 少しだけ……

 ダメだ。

 やっぱり読めないよ。

 

(ペルセポネ……本当にそれでいいのか?)


 オケアノス……?

 見ていたの?


(オレはペルセポネで、ペルセポネはオレだからな)


 ……わたし、泥棒しちゃったよ。

 胸が痛いの。

 

(今ならまだ引き返せるぞ?)


 引き返せる?

 でも……


(少し勇気を出して読んでみろ)


 でも……


(ペルセポネ……勇気を出すのは難しい事だ。でも、今このノートを隠せば長い時を後悔しながら暮らす事になるんだぞ?)


 ……オケアノス。

 それはそうだけど……

 どうしよう……

 どうしよう……

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