商売上手の店主には気をつけて~その三~
ベリス王がアルストロメリア王からの贈り物を欲しがっているね。
ドワーフのおじいちゃんはダイヤモンドで像を作るくらいだから、この壁に挟まっている像以外の贈り物の素材もかなり高価なはずだよ。
「それは助かりますなぁ。では、わたしの方からデッドネットル王に伝えておきましょう」
マグノリア王も嬉しそうだ。
心底、贈り物が嫌だったんだね。
「あぁ……リコリス王は、どなたに贈り物を譲っているのでしょうか……できればそちらもいただきたいのですが……」
ベリス王は全部欲しくなっちゃったんだね。
アルストロメリア王の像が欲しいんじゃなくて、素材が欲しいだけなんだろうけど。
「んん? だったら第三地区に戻ったら晴太郎に話してみろ」
野田のおじいちゃん……?
晴太郎に話してみろって……
じゃあ、まさかリコリスのお兄様から変な像を譲ってもらっているのって……
吉田のおじいちゃんなの!?
「え? あぁ……そうだったのですか。ですが……うーん。おじい様からお譲りいただくのは、さすがに気が引けますねぇ」
ベリス王は吉田のおじいちゃんの事が好きだから、気を遣っているみたいだね。
他の誰かだったら騙して奪い取っていたはずだよ。
「んん? ははは! 晴太郎はヘンテコな像を漬け物石代わりに使ってるんだ。重さがちょうどいいらしくてなぁ。あれで漬けるとひと味違うらしいぞ? でも似たような重さの石を持ってくれば問題ねぇだろ」
ダイヤモンドの塊を漬け物石代わりに!?
さすが吉田のおじいちゃんは、やる事が違うね。
「なるほど……では、同じくらいの重さの石を見つけてくれば良いのですね。寸分たがわぬ物を見つけねば」
ベリス王は、そういうところは真面目なんだよね。
本当にぴったり同じ重さの石を見つけてきそうな勢いだよ。
「ははは! だいたい同じなら大丈夫だろ。ところでぺるみの『洗濯師』の仕事は大丈夫なんか? 他にも客がいるんだろ? 待ってるんじゃねぇんか?」
「大丈夫です。洗濯時間は長めに設定してありますので。いやぁ、まさかアルストロメリア王の像が手に入るとは……ははは! ぺるみ様の近くにいると良い事ばかりですよ」
ベリス王……
それって、行く先々で何かもらえたり、商売のネタを見つけられると思っているんじゃないよね?
また、わたしから商売に繋がりそうなアイデアを聞き出そうとしているんじゃ……
あぁ……
これから毎日『洗濯師』をやらされるんだよね?
先が思いやられるよ。




