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全てを一人で背負うなんて無理だよ

「まさか子や孫ほど年の離れた王達と夢を語り合う事になるとは……なかなか有意義な時間でしたなぁ」


 マグノリア王が嬉しそうに話しているね。


「マグノリア王は、最期の時まで王でいるんか? ずっと民の為に王で居続けるんか? 最期くらい自分の為に時間を使いてぇとは思わねぇんか?」


 野田のおじいちゃん?

 急にどうしたのかな?


「自分の為に……そうですなぁ。ずっと王でしたからなぁ。他の生き方など考えもしませんでした。ははは! わたしは根っからの『王』のようですなぁ」


「そうか……無理してるんじゃねぇんならいいけどなぁ。王だって人だ。子に王位を譲って少しのんびりしたってバチは当たらねぇぞ?」


「わたしは……王になる為に多くを傷つけました。王になってからも聖女様の件で酷い事をし続けて……その罪滅ぼし……とでも言いましょうか……」


「罪滅ぼしか……立派な王なのは分かるけどなぁ。罪滅ぼしならもうとっくに終わってるだろ? 自分の為になんて一秒だって生きてこなかったんじゃねぇか?」


「……それは」


「王族に生まれるなんて平民から見りゃ羨ましい限りだけどなぁ。実際は辛い事ばかりだろ。国の全てをたった一人で背負うなんて、とてもじゃねぇがオレには無理だ」

 

「ノダ殿……」


「疲れたら休まねぇとなぁ。『平民に生まれて自由に生きたかった』……最期の言葉がそれじゃ残された家族は、いたたまれねぇぞ?」


「……え?」


「すまねぇなぁ。その本は日記だったみてぇだ。パラパラって見ちまった。最後に書いてあるページを見てみろ」


「最後のページを?」


 マグノリア王がページをめくっている。

 何が書いてあるのかな?


「これは……」


 マグノリア王の表情が険しくなった?

 本を持つ手が震えている。


「『自分の胸の音すら聞きたくない。皆、好き勝手な事ばかり』」 


 小さく震えるマグノリア王の声に、かなり苦しい内容が書いてある事が分かる。

 それでも声に出して読んでいるのは……

 わたし達に聞かせようとしているの?


「『……もう何も聞きたくない。聞こえない場所に逝こう。わたしは独りだ。この広い世界に誰も信じられる者がいない、ただの寂しい老人……息子にさえ早く死ねばいいと思われているに違いない。早く王位を譲れと思われているに違いない。……もう誰の事も信じられない。国の為に全てを捧げてきたというのに……なんと虚しいのだ。王になど、ならなければよかった。継承者争いで死ねばよかった。そうすれば、これほど苦しまずに済んだのだ。己の為だけに生きた事があっただろうか……平民に生まれ自由に生きたかった……誰の事も信じられないこの闇を生き続ける事に疲れ果てた。マグノリアなど滅びればいい。自分勝手な奴らが生き続け、真に国を想うわたしがこれで終わるとは……マグノリアなど滅びればいい。皆、苦しみの中に死ねばいい。息子よ……お前もこの茨の道を進むのか……思い知ればいい。わたしの苦しみを……孤独の暗闇を。マグノリアの王だけに受け継がれる秘密……聖女様と隠し部屋。それだけは自死する前に伝えておかねば』」


 読み終えたのかな?

 マグノリア王がゆっくり本を閉じた。

 数代前のマグノリア王の日記か……

 さっきの野田のおじいちゃんの話から考えると、残された家族がこの日記を見たんだよね?

 隠し部屋は代々の王だけが入り方を知らされた……?

 じゃあ日記を隠し部屋に置いたのは、これを書いたマグノリア王の息子さん?

 父親の遺書を捨てる事ができずに、王だけが入れる部屋に隠した。

 そして、もう誰も入れないように隠し部屋の開け方が書いてある紙も部屋の中に残した……とか?

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