いきなりグサリとか嫌なんだけど
「(ははは。第三地区の皆さんは、いつもあり得ない事ばかりしますからねぇ)」
ベリス王がいつもの作り笑顔で話しているけど……
「(ところで『洗濯師』だけど、わたしだってバレバレじゃない?)」
「(おや、お気づきでしたか)」
「(当たり前でしょ? 明らかに浄化なんだから)」
「(ははは。人間達がぺるみ様だと気づきながらどう接するのかが楽しみですよ。まぁ、気づくのは四大国の王や関わりがあった人間だけだと思いますが。ほら、案内をしている人間も気づいているようですよ?)」
「(やっぱり。はぁ……マグノリア王とは、ついさっき今生の別れをしてきたのに、気まずいよ)」
「(ははは。もっと早く『洗濯師』の事を伝えておけば良かったですね)」
「(……わざとだよね?)」
「(ははは。ばれましたか。ですがお別れはできる時にしておきませんと。いつでもできるからなどと考えて先延ばしにしていると後悔する事もあるのですよ)」
ベリス王の娘さんの事を知っているから何も言い返せないよ。
「あ……ぺるみ……」
ん?
野田のおじいちゃんが壁を触りながら固まっている?
どうかしたのかな?
「おじいちゃん? 大丈夫? まさか、何か壊したんじゃ……」
「まずい……」
「まずい? 何か食べたの? 拾い食いなんてダメだよ!」
「違う……なんかガチャンって聞こえたんだ」
「え? ガチャン?」
「鍵が開いた音がしたんだ!」
「隠し扉みたいな事?」
「お? 壁が動いて階段が出てきたぞ! なんだ、矢が飛んでくるかと思った」
「階段が? うわ……ちょっと……明らかに隠し部屋だよ? 王様だけの秘密の部屋とかで知られたから、いきなりグサリとかないよね?」
「ちょっくら入ってみるか」
「もう! ダメだよ。ほら、案内している人間も困っているよ?」
あれ?
これ以上ないくらい目が見開いている。
困っているって言うよりは驚いているような?
「あの……この事を陛下に……」
案内していた人間が慌てて走っていった!?
まさか……
マグノリア王に『見られちゃいけない物を見つけたからグサリしちゃいますか? グヘヘ』とか言いに行ったんじゃ……
「ちょっと待って!? 行かないで!」
あぁ……
行っちゃったよ。
「おやおや、地下に繋がっているようですねぇ」
ベリス王が階段を下りていった!?
「ちょっと! 勝手にダメだよ!」
確実にグサリだよ!?
「地下!? こりゃ冒険の予感だなぁ。くうぅ!」
野田のおじいちゃんまで階段を下り始めた!?
「ちょっと! ダメだってば! 本当にグサリされちゃうよ!」
「グサリとは?」
……!
この声は……
マグノリア王!?
もう到着するなんて……
って、すぐ近くにマグノリア王の執務室が見える。
ベリス王との話に夢中で気づかなかったよ。
どうしよう。
見られちゃった。
見られちゃったよっ!
口封じされるんだ。
わたしもベリス王も野田のおじいちゃんも、皆ここから生きて帰れないんだ!




