大変な日々が始まる予感……?
「はい! それでは今から『洗濯師』としての仕事を説明します」
ベリス王はご機嫌だね。
ずっとニコニコ笑っているよ。
今回の毛量を増やしたりぬいぐるみの洗濯をする作業は、かなり儲けが出そうだからね。
「まず、こちらの箱にわたしがぬいぐるみを入れます」
なるほど。
ベリス王らしい落ち着いた素敵な箱だね。
ほぼ、ベリス王がやってくれる感じなのかな?
「先程も話しましたが、ぺるみ様は一切声を出してはいけません」
確かに、声でばれちゃうからね。
「そして『洗濯師』のぺるみ様が箱に触れると、なんと箱から素敵な音楽が流れるのです。あ、この時に浄化してください」
素敵な音楽?
どんな音楽?
「『ドコドコドコドコジャーン』の音は、こちらで用意してありますので。そして、わたしが箱を開けると……なんとぬいぐるみがピカピカと輝いているのです! あ、これはぺるみ様が適当にチョチョっと光らせてください。まぁ、五秒くらいですね」
チョチョっと?
チョチョっとってなんだろう?
それに『ドコドコドコドコジャーン』?
ドラムロールだよね?
絶対に吉田のおじいちゃんの入れ知恵だよ。
「ここまでで何か不明な点は? あ、そうでした。ぺるみ様だとばれないように絶対に帽子を取らないでくださいね。それから……」
ベリス王はずっと話しているね。
これじゃ、何か質問したくても無理だよ。
「というわけです。では出発です!」
『では出発です』って……
空間移動しろっていう事だね。
これから毎日ぬいぐるみの洗濯をさせられるのか。
はぁ……
いいように使われている気もするけど……
まだ人間と関われるのは嬉しいかも。
「よし! 出発だ!」
……?
ん?
野田のおじいちゃんが嬉しそうに笑っている?
風呂敷包みを持っているけど、どこかに行くのかな?
よく見たらいつもより良い服を着ているし。
「ささ、ぺるみ様! 早く行きましょう。約束の時間の十五分前ですよ? 商人としては十分前には着いていませんと」
ベリス王……
そういうところは、しっかりしているんだね。
「そうだぞ。時間は守らねぇとなぁ」
……?
野田のおじいちゃん?
え?
この感じ……
まさか……
「ちょっと待って!? 野田のおじいちゃんも付いてくるの!?」
「んん? そうだぞ。オレだけじゃなくて、毎日一人ずつ付いてくからなぁ」
「え? 毎日一人ずつ? ぬいぐるみの洗濯に?」
「ベリス王がなぁ、毎日世話になってる第三地区の皆に旅行気分を味わって欲しいって言ってくれてなぁ」
「ええ!?」
前にも同じような事があったよね?
そうだよ。
吉田のおじいちゃん達と出かけて大変な事になったんだ。
でも今回は一人ずつだし……
それにベリス王も一緒だから大丈夫だよね?
大丈夫……だよね?
今日はまだ常識的な野田のおじいちゃんだからいいけど、吉田のおじいちゃんが付いてきていきなり裸踊りを始めたら?
他の皆もそれぞれ独特っていうか……アレだから心配だよ。




