ベリス王はわたしが思っている以上に商売上手なのかも
「あ、そうだ。群馬で『田中のおじいちゃん』だったお父様が詐欺師に騙された時、宝くじを置いていかれてそれが当たって世界一周の船旅に行ったんだよ」
懐かしいなぁ。
「ほぉ。そうでしたか。ところでタカラクジとは?」
そうか。
この世界には宝くじが無いからベリス王は知らないんだね。
「宝くじっていうのは……例えば、チケットみたいな物を銅貨五枚とかで買うの。そのチケットの中に何枚か当たりがあってね? それを持っているとお金……金貨がいっぱいもらえるんだよ」
「……ですが、それでチケットの販売者に利益はあるのですか? 当選してもらえる金貨はチケットを販売した代金を集めた物なのですよね?」
「うーん……詳しい事は分からないけど売り上げの半分くらいが当選金で、一割がチケットを販売している店舗への給金とかチケットを作る費用。残りが販売元の利益……だったかな?」
「……? チケットを販売している店舗と販売元が違うという事ですか?」
「うーん。確かチケットの販売元は地方自治体……うーん。この世界にあるのかな? 国をさらに小さく分けている……みたいな?」
「ほぉ。それは魔族で考えると、魔王の下に種族王がいて、いくつかの種族をまとめている……その種族王の立場のようなものでしょうか?」
「あ! そうそう。そんな感じ!」
「……種族王がタカラクジを作り店舗で販売する? 店舗は、わたしの店舗で販売すれば一割の利益も入るか……ですがなぜチホウジチタイ? がタカラクジを販売するのですか?」
「えーと……確か、その利益で道路……道を整備したりとか……皆が住みやすくする為に使うんだっけ?」
「……? それでは販売しても利益はありませんね」
「あはは。ベリス王には向かないかもね」
「異世界の人間は変わっていますね。利益が出ないチケットを販売するとは」
「その売り上げ金で整備できれば、自分達で支払わなくて済むからかな? わたしにはよく分からないや。でも、ベリス王も洗濯をした人間に抽選券をあげるんでしょう?」
「ははは! わたしの店舗で取り扱う品物を景品にしていますからね」
「え? 世界一周旅行も取り扱うの?」
「はい。実は人間の船を手に入れまして。まぁ世界一周と言っても人間の国だけを一周するのですが。さすがに人間を魔族の島にご招待というわけにはいきませんからねぇ」
「人間の船? どこで手に入れたの?」
「ははは。ベリアルのガラス細工の予約を受けに行った時に、人間の王からです。まぁ実際はぺるみ様が空間移動するので必要ないのですが『自由に使っていい』と言われましたので」
「そんなに心が広い王様がいたの? あれ? でもガラス細工は四大国の王様とわたしだけしか持っていないんだよね?」
「はい。マグノリア王とデッドネットル王ですよ。過去の王達が聖女の状態をこっそり見に行っていた船を譲り受けました。もう必要ないから……と。ちなみにわたしが魔族だと気づいているようでしたよ」
「え? それって大丈夫なの?」
「はい。わたしとぺるみ様が大親友だと伝えると、ぜひ船を使って欲しいと。まぁ、ベリアルグッズを唯一扱える店舗という立ち位置を考えれば普通の人間でない事は容易に想像できますからねぇ」
わたしとベリス王が大親友?
あり得ない。
わたしはいつも搾取される被害者なんだよ?
それにしても……
「王様達は魔族が怖くないのかな?」
魔族は人間を食べる存在なのに。
まぁ、ベリス族は人間を食べてはいないみたいだけど。




