ベリアルとスーたん(4)
今回はベリアルが主役です。
「アンコール! アンコール!」
アンコール?
なんだ?
ジャックは、どうしたんだろう。
「「「アンコール! アンコール!」」」
……?
アンコール?
広場の人間達の声が重なってるけど……
「メリアルお兄たん……アンコールはもう一回歌って欲しいっていう事らしいよ?」
え?
スーたんは難しい言葉を知ってるんだな。
「なるほど、もう一回か。スーたんは物知りだな。でも、他に知ってる歌なんて無いし……あ、そうだ。よし! じゃあ、ばあちゃんがいつも歌ってくれる子守唄を歌うか! スーたんは知ってるか?」
「うん! いつも歌ってくれるから知っているよ?」
それなら一緒に歌えそうだな。
「よし! じゃあ、いくぞ! ……ん?」
あれ?
急に夜になった?
いや、違う。
これはハデスの闇に近い力?
真っ暗だ。
……あれ?
ステージだけが光り始めた?
どうなってるんだ?
この光は、ぺるみの神力だよな……
「メリアルお兄たん……ぺるみお姉たんが人間達と内緒話をしていたよ? ステージを頑張るお兄たんに最後にご褒美をあげたいって」
スーたんは水晶で見てたのかな。
オレ、全然知らなかったよ。
「ご褒美? ぺるみが?」
「うん。キラキラ光る海を見せてあげたいって。人間達も、頑張って練習をしているメリアルお兄たんに喜んで欲しいって言っていたよ」
「キラキラ光る海? この辺に海は無いけど……」
「あ……お兄たん。見て?」
「え……? うわあぁ!」
人間達がいる場所にキラキラ光る星がある……?
どうなってるんだ?
ん?
でも、あの光からもぺるみの神力を感じるぞ?
そういえば、前にぺるみが『サイリウムでオレを応援する』とかなんとか言ってたよな。
キラキラ光る物って言ってたけど、これの事か?
すごい……
キラキラの光が海みたいに揺れてるぞ。
綺麗だ……
「メリアルお兄たん……綺麗だね」
スーたんが手を繋いできた。
あぁ……
かわいい手だな。
小さくて温かい。
オレ……
ずっとずっとひとりぼっちだったけど……
今はもう違うんだな。
スーたんがいて、ゴンザレスがいて、第三地区の皆も、魔族もいて……
人間だってオレを応援してくれてるんだ。
それから……ぺるみ。
ぺるみはいつもオレの幸せを願ってるんだ。
ぺるみの中にオケアノスがいるからかな……
母親みたいに感じる時がある。
皆がオレとスーたんを応援してくれてるんだ。
しっかりしないとな。
「皆! ありがとう。皆の応援、すごく嬉しいよ。ここから見るとキラキラ光る海みたいだ!」
「「「キャー!」」」
オレが話すたびに黄色い悲鳴がすごいな……
暗くて皆の顔は見えないけどオレを応援する気持ちが伝わってくる。
よし!
心を込めて歌うぞ!
ばあちゃんがいつも歌ってくれる子守唄を!
確かジダイゲキ……?
とかいうやつの始まる時の歌らしいけど、歌詞がものすごくいいんだよな。
深いんだ。
とにかく深いんだよ。
生きてると苦労もあるけど、しっかり前に進めって背中を押してくれるんだ。
あぁ……
特に三番の歌詞がいいんだよな。
今のオレへの応援歌みたいで最高なんだ。
人間の皆にもこの歌の良さが伝わるといいな。




