ベリアルとスーたん(1)
今回はベリアルが主役です。
ついに始まったな……
『全種族ベリアルアイドル化計画』か。
全種族……
人間も魔族も天族も魅了するって事だよな?
オレにそんな事ができるのか?
いや、ダメだ。
こんな考えじゃ皆に何かを伝えられるはずがない。
オレは皆に言いたいんだ。
『この世界を大切にして欲しい』って。
その為にもオレがこのステージを頑張らないと。
皆を感動させられるくらい頑張れば、きっとオレの話を聞いてくれるはずだから。
でも……
うぅ……
緊張して身体の震えが止まらないんだ。
先生が作ってくれた、この真っ白いフワフワドレス……
プリンみたいな匂いがする。
甘くて幸せになる匂いだ。
昨日、先生が言ってたな。
『ヒヨコ様が緊張しないようにバニラの香りをつけておきました』って。
先生……
時々、変態臭がして怖かったけど……大好きだ。
「メリアルお兄たん……大丈夫?」
超絶かわいい弟のスーたんが心配そうにオレを見つめている。
オレと同じドレスの色違いを着てるけど……
どうやって手に入れたんだろう?
そういえば『どこの傘下にも入っていなかった種族』が、ばあちゃんに教わりながら似たような物を縫ってたような……
そうか、今でもスーたんの種族の為に陰ながら動いてるんだな。
それにしても……
くうぅ!
スーたんの真っ白い身体に、淡いピンクのドレスが良く似合う。
って、そうじゃなくて。
しっかりしないと。
オレはお兄たんなんだから。
お兄たん……
ぐふふ。
ぐふふふ。
よし!
頑張るぞっ!
「うん。大丈夫だ。スーたん……ありがとう。スーたんのおかげで頑張れそうだ」
「……!」
ん?
スーたんが何かに驚いたみたいだけど……
「スーたん?」
どうかしたのか?
やっぱりいきなりステージに立つなんて緊張するのかも。
「あ……うん。スーたんね? さっきぺるみお姉たんに『偉いね』って言われたら変な気持ちになったの」
「え?」
オレが乾かしてもらってる時か?
何があったんだ?
「今までスーたんは『かわいいね』しか言われた事がなかったから」
「変な気持ちか……もしかして、ちょっとくすぐったいみたいな感じ……とか?」
「……うん」
「そっか。スーたんは認められて嬉しかったんだな」
「え……? 認められて嬉しい……?」
「今までの『かわいい』っていうのとは違って、内面を褒められて嬉しくなったんだ」
「内面を……?」
「スーたん……」
「……なに? メリアルお兄たん」
「ありがとう」
「え?」
スーたんが驚いた顔をしている。
あぁ……
かわいいなぁ。




