スーたんとぺるみの内緒話(3)
今回はスーたんが主役です。
「わたしには集落だけが全てで……だから、他の場所で生きる事が怖くてね」
ぺるみが辛そうな顔で話している。
いつもはヘラヘラ笑っているのに……
「ぺるみも怖かったのか……?」
「ふふ。わたしにだって怖い事はあるんだよ? その中でも一番怖いのは……大切な存在を喪う事なの」
「大切な存在を……?」
「考えてみれば……わたしはずっと暗闇の中にいるって思い込んでいたの。天界にいた頃は主治医のファルズフに毒を盛られ続けて最後は命を奪われて……魂が群馬に行ってからは不安定な状態のおばあちゃんを守りながら集落から追い出されたらどうしようって常に怯えて……ルゥになってこの世界に来てからは、人間にも魔族にもなりきれない自分に苦しんで……」
「ぺるみ……」
ぺるみも色々あったんだな。
「でも、そんなの全部勘違いだったの」
「勘違い?」
「うん。ファルズフに毒を盛られ続けても生きていられたのは吉田のおじいちゃんが定期的に解毒してくれていたからで、群馬でも集落の皆はわたしとおばあちゃんを大切に想ってくれていたの。おばあちゃんが亡くなってひとりぼっちになったわたしに『一緒に暮らそう』って言ってくれたおじいちゃんもいたんだよ? ルゥになってからも、魔族はわたしを心から愛してくれて『家族』になってくれたの」
「そうか……」
「それに、今では人間とも良い関係になれたしね」
「……ぺるみも苦労していたんだな」
「苦労……か。でもね……わたしのせいで不幸になった天族もいるの」
「ぺるみのせいで?」
「天界でわたしがファルズフに殺されて……異世界に逃がされたわたしの魂を守る為にお父様が神様を辞めたの。そして、代わりに神様になった天族と、その恋人は引き離されて……」
「そうだったのか。そいつらは今はどうなったんだ? 今はぺるみの父親が神に戻ったんだろ?」
「うん。神様をしていた天族はブラックドラゴンとしてこの世界に追放されたの。神様を辞める直前に大天使を大量に自害させたからその罰としてね。恋人の方は引き離された時に、この世界に追放されていたの。ブラックドラゴンは引き離された恋人をずっと捜していてね。ホワイトドラゴンにされていた恋人を見つけると、陰ながら守っていたの」
「そうだったのか……でも、ホワイトドラゴンって確かドラゴン王だよな?」
「そうだよ。今、ブラックドラゴンとホワイトドラゴンは異世界で暮らしているの。もうすぐ帰ってくるんだけどね」
もうすぐ帰ってくる?
ずっと異世界では暮らさないのか?




