スーたんとぺるみの内緒話(1)
今回はスーたんが主役です。
ふふふ。
ベリアルは簡単だからな。
ちょっとかわいく甘えれば簡単に思い通りになるんだ。
たまたま波打ち際に大きめな魚がいて背中に乗せてくれて、さらにたまたまリコリス王国の波打ち際に辿り着いたんだ。
さらにさらに、たまたま波打ち際にオレにぴったりの衣装が落ちていて、さらにさらにさらに、たまたま眠くなってウトウトして目が覚めたらステージに着いていたんだ。
波打ち際にオレにぴったりの衣装が落ちていて良かった。
そうじゃなければ、ベリアルだけがキラキラの衣装を着るところだった。
それにしても、海はすごいな。
いつでもオレが欲しい物をくれるんだ。
第三地区に来る前もお菓子が食べたくなると、いつの間にか波打ち際にあったし。
初代の神のヨシダ? が今までオレ達が暮らしていた島を第三地区の隣に運んでくれたけど……
オレ達の種族は、ずっと第三地区にいるからもう波打ち際には何も流れてこないと思っていたんだ。
でも、今も毎日お菓子とかが流れてくるんだよな。
第三地区の皆には何も流れてこないのに、オレ達の種族が欲しい物は毎日流れてくる。
どうしてだろう?
「スーたんも衣装を着ようね。ベリアルは今、風の上位精霊のジンが乾かしているから」
ぺるみが着替えを手伝ってくれるのか。
確かにオレのかわいい手じゃ上手く着られないからな。
「ぺるみ! オレの方がベリアルよりかわいいのは分かってるが、今よりもさらにかわいく見えるようにするんだぞ!」
あ、また嫌な事を言っちゃったよ。
オレの方がベリアルよりかわいいのは事実だけど、こんな風に言うつもりなんてなかったんだ。
怖がられちゃったかな?
オレはかわいいけど、世界一強い種族だから……
「あはは! はいはい。分かっているよ。うわあぁ! 本当にベリアルの衣装にそっくりだね」
ぺるみはオレが何を言っても怒らないんだな。
オレがかわいいからか?
それとも、元々怒らない奴なのかな?
「これは、この国の波打ち際に落ちてたんだ」
「ふぅん……じゃあ後で海に向かって大声でお礼を言ったら?」
「海に?」
「だって海が衣装を運んでくれたんでしょう?」
「海が? ……そうか。いつもオレが欲しい物は海が運んでくれたんだよな。でも……一番欲しい物は運んでくれなかった」
「一番欲しい物? それって何?」
あ……
口を滑らせたかも。
でも、ぺるみになら話してもいいか。
オレの嫌な態度の事を誰にも話さないし。
この話も誰にもばらさないはずだ。
どうして会ったばかりのぺるみの事をこんなに信じられるんだろう……
「オレ……弟か妹が欲しかったんだ」
ちょっと幼稚だったかも。
バカにされないか心配になってきた……
やっぱり話さない方が良かったかな?
「弟か妹? でも、そうなったらスーたんは今みたいに皆からかわいがられなくなるんじゃない?」
……?
思っていた反応と違う。
オレの心配をしてくれるのか?




