未来は少しずつ変わり始めているんだね~後編~
「未来を変えようとする誰か?」
「はい。変えようとしなければ決して変わりませんが、変えようとする誰かが小石を投げればそれが波紋となり大きく広がっていくのです」
マグノリア王……
良い事を言っているけど、ゴンザレスをこねくり回す手はずっと動いたままだよ。
そういえばマグノリア王は一度もベリアルを抱っこしていないね。
ベリアル大好きなマグノリア王がどうして?
って、今はその話じゃなくて……
「今はまだ小石が投げられた段階……なんだね」
「はい。これから少しずつ時間をかけ大きな波紋となるでしょう」
「マグノリア王……」
大きな波紋……か。
世界中に広がるくらいの大きな波紋……
「聖女様……数千年も暗い洞窟に閉じ込めてしまい……本当に申し訳ありませんでした。これからは、このまばゆい幸せの島で穏やかにお眠りください」
マグノリア王が眩しそうに桜の木を見上げている。
「そうです……聖女様……代々のデッドネットル王は心から聖女様を大切に想ってきました。その心に嘘偽りはありません。聖女様を蘇らせ、今度こそ苦しまずに幸せな日々を過ごして欲しい。その気持ちだけでここまでやって来たのです。ですが……もっと早くこうするべきでしたね」
デッドネットル王は、初めて会った時は嫌な性格だったけど今はかなり印象が変わったよ。
「聖女様……わたしはアルストロメリアの王です。恥ずかしながらわたしは聖女様の存在を知る事なく王になり……まさか、聖女様が洞窟に閉じ込められていたとは……これからは、この暖かな場所で安らかにお眠りください」
アルストロメリア王は優し過ぎて心配だったけど……
王妃が内定したなら二人で支え合ってきっと今よりも素敵な王様になるはずだよ。
あぁ……
二代前の聖女を想う王様達の気持ちが伝わってきて胸が熱くなる。
涙が溢れてきたよ……
「ペリドット……」
お兄様が真剣な表情で話しかけてきた?
「うん……?」
「これからは、自分の幸せの為に生きるんだよ? 誰かの犠牲になんてならないでね」
「……うん」
昨日の約束……
絶対に守るからね。
「あの……ペリドット様?」
マグノリア王が申し訳なさそうに話しかけてきた?
「どうかしたの?」
「このサクラの木……譲っていただく事は可能でしょうか?」
「え?」
このずっと咲き続ける桜の木は、豊穣の女神であるお母様が創ってくれたんだよね?
人間に譲ってもいいのかな?
それに、譲るってどうやってやるの?
「ぺるぺる……」
あれ?
吉田のおじいちゃん?
いつの間に来ていたんだろう。
あぁ……
水晶で見ていて助けに来てくれたのかな?
「おお! これはヨシダ殿!」
「ああ! 救世主様!」
「お久しぶりです!」
王様達は吉田のおじいちゃんをなぜか尊敬しているんだよね。
マグノリア王は、ふんどし踊りが大好きなんだよ。
「ははは。久しぶりだなぁ。その木は挿し木で増やすんだ。一本ずつ枝を持っていけ。それぞれの国でその枝が立派な木になる頃には魔族と人間が仲良く暮らせるようになってるだろ……」
吉田のおじいちゃんが優しく微笑んでいるね。
人間と魔族が仲良く暮らせるようになる為には、かなりの年月がかかるはずだよ。
でも、いつか……
世界中に桜の木が増えて、人間と魔族が仲良くお花見できるようになったら……
すごくすごく素敵だね。




