熊太郎と名づけたぺるみと、クマポイと名づけたカサブランカ……?
「ペリドット様は幸せですか? 確か魔族と結婚しているのですよね」
公爵はわたしの身体が神様から授けられたと思っているんだっけ。
わたしが元の身体に戻った事を知っているのは、お兄様とシャムロックのおばあ様と海賊のおばあさんだけなんだよね。
「うん。いつも大切にしてもらっているよ。すごくすごく幸せなの」
「そうですか……爆発物騒ぎや公女断罪。いきなりドラゴンを呼んだり、神殿相手に暴れたり。ペリドット様のお姿は、幼い頃の何をしでかすか分からないカサブランカのようでした。ペリドット様が何かをするたびに、幼い頃に戻ったような感覚になり……あぁ……あの頃を思い出すと冷や汗が出てきます」
「おばあ様はそんなに手がかかったの?」
「それはもう……虫取り網で魔物を捕まえようとしたり、崖を登らされたり……今思えばよく生きていられました」
「おばあ様は、そんなにすごかったんだね」
「はい。クマポイを倒した時には血の気が引きました」
「クマポイか……」
熊太郎の事だよね?
「どうかしましたか?」
「ここだけの話だよ?」
公爵になら話しても大丈夫だよね。
それに幸せの島に遊びに来たら熊太郎に会うかもしれないし。
「……? はい?」
「クマポイ……熊太郎は今、幸せの島の近くで暮らしているの」
「ええ!? あの魔物が!?」
魔物じゃなくて天族なんだけど、それは秘密にしないとね。
「すごく優しくてね。パートナーと赤ちゃんと幸せに暮らしているよ。熊太郎はあの洞窟を守っていたの」
「熊太郎? ペリドット様が名づけたのですね。そんなところまでカサブランカによく似ています」
ネーミングセンスがないって事か……
「あはは……そうみたいだね」
「熊太郎さんは、あの洞窟の金を守っていたのですか?」
金?
あぁ……
公爵はあの洞窟を金山だって騙されて悪い奴に連れていかれたんだっけ。
「金よりも大切な存在だよ」
「金よりも……?」
「あの洞窟には熊太郎が何よりも大切にしている『家族』がいたの。熊太郎の大切な『家』だったんだよ」
「そうでしたか……それなのにいきなり侵入されたあげく殴られて。申し訳ない事をしました」
「熊太郎も人間の女の子に殴られて怖かったって言っていたよ。熊さんみたいに見えるけど、花や野菜を育てるのが大好きで……すごくかわいくて優しいの」
「熊さん……ははは! ペリドット様のそういうところもカサブランカによく似ていますよ」
「公爵……」
「はい?」
「これからもおばあ様をよろしくお願いします」
「……はい。お任せください」
公爵と微笑み合うと心が温かくなる。
初めて会った時は腹の探り合いだったけど、今ではこんなに仲良くなれたよ。
「ペリドット様……」
「うん? どうかした?」
言いにくいのかな?
恥ずかしそうにモジモジしているけど。




