アルストロメリア公爵は日に日に若返るよね
「はぁ……ついに、これで最後か……」
今日の『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』が終われば人間とは関わらなくなるんだね。
王子達は後から来るから、ベリアルとゴンザレスと行く事になったんだけど……
「ぺるみは目のギンギンが少し治ってきたな。それにしても、ぺるみは大荷物だな」
抱っこしているベリアルがわたしを見上げているね。
白と淡い黄色のボンネットを被っていて超絶かわいいよ。
気づかれないようにこっそり吸っちゃおうかな?
ぐふふ。
「うん。パパが用意してくれたお茶を飲んだら少し治ってきたよ。荷物は必要になりそうだから持ってきたの」
「必要になる? もしかしてお菓子か?」
ベリアルの瞳がキラキラに輝いているね。
「ふふ。残念。違うよ。でも、ベリアルが使う物だからね」
食欲が無いなんて言いながら絶対に四大国の王様達からお菓子をもらうはずだよ。
さっきも、さんざん食べた後に『緊張して全然食べられなかった』って言っていたし。
今日は魔術戦もあるけど、その後に市井の広場に移動してベリアルのステージをするんだよね。
ぐふふ。
超絶かわいいベリアルが歌ったり踊ったり……
くうぅ!
人間達が大興奮する姿が目に浮かぶよ。
でも、お菓子を食べ過ぎてお腹がパンパンになって動けなくなったらステージができなくなるからね。
お腹を減らす為に、たらいで泳いでもらうんだ。
もちろん人魚がプレゼントしてくれた貝殻ビキニも持っていくよ。
ぐふふ。
ステージの端の辺りで水遊びすれば、あまりのかわいさに人間達が失神しちゃうかもね。
そういえば、スーたんがいないけど……
まだ寝ているのかな?
絶対にベリアルと一緒にステージに立ちたがると思っていたのに……
「オレの物か。ステージで使う物だな。よし! じゃあ出発だ!」
こうしてリコリス王国アカデミーの広場に着いたけど……
あれ?
ここじゃないのかな?
誰もいないね。
「ベリアル? アカデミーの広場で魔術戦が行われるんだよね?」
「オレもそう聞いてたけど……変だな」
「うーん……あ、そういえば今日だね。ベリアルのステージ」
「うぅ……そうなんだよ。『全種族ベリアルアイドル化計画』だっけ? はぁ……緊張して朝ごはんを少ししか食べられなかったよ」
いや、かなり食べていたよね。
ご飯にうどんにパンに……
あ、元気を出す為にって言いながらプリンも食べていたような……
今は緊張しているみたいだから言わないであげよう。
「あはは。そうなんだね……」
「うーん……? あれ? 向こうから歩いてくるのって……」
「え? 向こう? あ……アルストロメリア公爵だね。アンジェリカちゃんのおじいさんの……」
「アンジェリカのじいちゃん……ずいぶん若返ったよな」
「身体に残っていた毒が消えたからかな? おじいさんって言うよりは、おじ様って感じだよね」
「うわ……オレを見つめながらニヤニヤしてる。今日も頬擦りしたり吸われたりするのかな……あれ? ぺるみを見て真っ赤になったぞ?」
「え? あ、確かに。公爵は、幼い頃にお母様に一目惚れしていたんだよ。成長したわたしの姿を見てその時の気持ちを思い出したんじゃないかな? ん? またベリアルを見てニヤニヤし始めたよ。ベリアルの事がかわいくて仕方ないんだね。絶対頬擦りされるよ……」
「はぁ……今日が最後だから我慢してやるか」
「ふふ。そうだね」
「ペリドット様……おはようございます」
公爵が顔を赤くしながら話しかけてきたね。
「うん。おはよう。今日も素敵だね。また若くなったみたいだよ」
「ありがとうございます。ペリドット様のお父上の薬のおかげですっかり元気になりました。それにしても少し見ない間に成長されましたか? よそ様の子の成長は早いと言いますが……うーん?」
さすがに一晩で成長したなんて言えないよね。
「あはは……本当にそうだよね。よその子の成長は早いよね。帰ったらパパに薬の事を伝えておくね」
パパは水晶で見ているはずだから今頃喜んでいるかな?




