偽ぺるみと偽ベリアル
ついに人間と関わる最後の日がやってきた。
ベリス王が作ってくれたドレスを着て、髪をフワフワに巻いて……
うわあぁ!
鏡に映った姿にドキドキする。
成長したわたしは、いつもより背が高くて胸も脱絶壁したんだ。
自分じゃないみたい。
でも一日で容姿が変わり過ぎだよね。
うーん……
人間に変に思われないか心配だよ。
「ぺるみはどうしたんだ? 悩み事ならオレに話してみろ」
人魚が話しかけてきたけど……
「ちょっと……またわたしの真似をしているの?」
わたしのアカデミーの制服を着てウィッグも被っているね。
あぁ……
筋肉ムキムキだから制服がパツパツだよ。
毎回思うけどよく入るね。
それに、いつものお面もつけている。
まさかわたしの代わりに『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』に行くつもりじゃないよね?
「ぺるみが辛いならオレが代わりに行ってやるぞ?」
やっぱり!
絶対阻止しないと!
この前わたしの振りをしてアカデミーに行った時、純粋なクラスの皆は本物のわたしだと思っていたんだよ。
どう見たって別人なのに!
それとも、クラスの皆にはわたしがこんな風に見えているの?
「大丈夫! わたしが行くから。それより、もうわたしの振りをしないでよ」
「ん? オレだけじゃないぞ! ははは! あっちには偽ベリアルもいるからな!」
「ええ!? 偽ベリアルってあの時の……って……うわ……」
どう見ても黄色い全身タイツを着た筋肉ムキムキの巨大な男がお面をつけている……
そう、一言で表すなら変態……
「ははは! 偽ベリアルもなかなか良いだろう!」
「なかなか良いって……確かあのお面は吉田のおじいちゃんが描いたんだよね?」
「ああ。そうだぞ。そういえば、少し前はベリス王の店に飾る絵も描いていたな」
「え? ベリス王のお店の絵って……瞳が顔の半分以上あるあの絵? わたしがそう描けって言ったみたいで恥ずかしかったんだよ! あの絵……吉田のおじいちゃんが描いたの……?」
どうりで……
一昔前の少女漫画みたいな絵だったよ。
「恥ずかしいのか? キラキラしていてなかなか良かったぞ! ははは!」
「絵自体は良いんだよ。かわいいし。でも、わたしが『目は顔の半分より大きくしてキラキラに描いてね』って言ったみたいで恥ずかしいんだよ!」
「そういうものなのか? 女心は難しいな」
「あのさ、前から思っていたんだけど……」
「ん? なんだ?」
「人魚は女体化できるのにどうして筋肉ムキムキのままわたしの制服を着ているの? 苦しくないの?」
「ははは! 確かに苦しいが、オレの鍛え上げられた筋肉を人間にも見せてやりたいんだ!」
「確かに人魚達の筋肉は立派だけど……なんていうか……変態にしか見えないっていうか。危ない感じがするんだけど……」
制服を着るのは良いんだけど問題はあのお面だよ。
感情が無い顔だから、ちょっと怖いんだよね。
それ以上に怖いのは偽ベリアルだよ。
ムキムキ全身タイツに無表情のお面をつけているから小さい子が見たら泣くレベルだ……
絶対に、この姿のまま『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』に行かせないようにしないと。




