ベリアルとペルセポネ(4)
「ベリアル……おいで……」
さりげなく……
絶対に、にやけたらダメだよ。
抱っこしてスーハーして頬擦りできるチャンスなんだから!
ベリアルがつぶらな瞳でわたしの顔をじっと見つめている。
変態心がないか確認しているんだね。
絶対に絶対に、にやけたらダメだよっ!
「……! ぺるみがオレを見る目が気持ち悪いよぉ」
くっ……!
下心がばれたか!
「はあ!? ちょっと! 失礼だよ!?」
「うぅ……うわあぁぁぁん! うさちゃんが悪口を言ったよぉ。あと、ぺるみが気持ち悪いよぉ! ばあちゃんっ! 抱っこぉ!」
ベリアルがおばあちゃんの腕に飛んでいった!?
わたしの方が近くにいたよね!?
しかもわたしが気持ち悪いってどういう意味!?
「ベリアル!? わたしに抱っこされなよ!」
「嫌だねっ! 変態め!」
「おばあちゃんに抱っこされているからって言いたい放題だね……」
「ぺるみに良い事を教えてやる。この世界で一番偉いのは、ばあちゃんなんだ! だから、ばあちゃんに抱っこされていれば安全なんだ!」
「え? おばあちゃんが一番偉いの?」
「そうだぞ! ご飯も旨く作れるし優しいし『ベリアルは良い子だなぁ』って毎日頭を撫でてくれるんだ!」
「ん……? それって偉いの?」
「偉いんだ! いつも誰かに優しくできる奴は偉いんだ!」
「確かにそうだけど……それなら吉田のおじいちゃんだってお母様だって優しいよ?」
「そうじゃないんだ! ばあちゃんは特別なんだ! ばあちゃんに抱っこされるとすごく温かい気持ちになるんだから!」
「特別?」
「うん。オレはオケアノスが創り出した心だけど何も思い出せないんだ」
「ベリアルはその頃の事を何も思い出せないんだね……」
「そうなんだ。何も思い出せなくて……天族のオレにも母親がいるはずだろ? でもその記憶もないんだ。だから、ばあちゃんに抱っこされると母親ってこんな感じなのかなって……」
「ベリアル……」
ずっと辛かったんだね。
「オレにとってばあちゃんは母親みたいな存在なんだ。甘えてもわがまま言っても全部笑って受け入れてくれる優しい存在なんだ。だから……ばあちゃんは一番なんだ。もちろんバニラちゃんの事も大好きだけど……バニラちゃんもばあちゃんに甘えてるだろ? だから、ばあちゃんは一番偉いんだ! それに、魔王も初代の神のじいちゃんも、ばあちゃんには敵わないだろ?」
確かにお父さんも吉田のおじいちゃんも、おばあちゃんには弱いからね。
実際おばあちゃんは、初代の神の母親だし、群馬ではお父さんの母親だったし。
うーん……
じゃあ、どんなに偉い人でも母親が一番大切っていう事?
そう考えるとベリアルが言う通り、おばあちゃんは一番偉いのかもね。




