ベリアルとペルセポネ(2)
「このベリアルのガラス細工、うさちゃんが欲しがったらしいの」
ベリス王も、うさちゃんが相手だから金貨は要求しなかったのかな?
それとも家具代の中に入っていたりして……
「うさちゃんが? オレの事が嫌いなのに?」
ベリアルがかなり驚いているね。
「うーん。嫌いじゃないみたいだよ? わたしがベリアルを抱っこすると嫉妬しちゃうみたい」
「嫉妬? なんだ。嫌われてるわけじゃなかったのか」
毎日悪口を言われていれば嫌われていると思っちゃうよね。
「あ、うさちゃんが起きたみたいだね」
ソファーでモゾモゾ動き出したよ。
あれ?
そういえばベリス王がいないけど……
「おや? ぺるみ様、おはようございます」
ベリス王がバスルームから出てきたね。
まさか、あの小さい湯船に入っていたの?
「おはよう。えっと……お風呂だったの?」
「え? わたしがですか? さすがにあの小さい湯船には入れませんよ。うさちゃんの為に湯船にお湯を張っていたのです。昨日は入浴せずに寝てしまいましたから。このソファーが気に入ったようで嬉しいです」
『さすがにあの小さい湯船には入れない』?
やっぱり初めからうさちゃんの為に、この島の家を用意したんだね。
わたしとハデスの為の島なんて微塵も考えていなかったんだ。
ベリス王らしいやり方だよ。
「……ベリス王は甲斐甲斐しいね」
うさちゃんの事がかわいくて堪らないんだね。
「ははは。うさちゃんの為ですから」
「うさちゃんの為ならタダで働くの?」
「そうですねぇ。特に嫌な気持ちにはなりません。むしろ喜びです」
「ふぅん。そうなんだね」
「あ、そうでした。実は昨晩ぺるみ様の新しいドレスを作りまして」
「え? 新しいドレス?」
「はい。本日着る物です」
「制服を着ていこうかと思っていたんだけど……そっか。成長したから入らないかも」
「ご安心ください。昨晩のうちに最高級の布を使い完成させましたから」
「え? ドレスを一晩で!?」
「はい。コルセットを使用しない緩いドレスです。いつかぺるみ様から頼まれていたでしょう? 人間のドレスはきつくて嫌だから緩いドレスを作って流行らせて欲しいと」
「覚えていたんだね」
まぁ、商売に関わる事だから忘れるはずないか。
「人間の貴族女性はコルセットに苦しめられてきましたからねぇ。本日の『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』でぺるみ様がこちらのドレスを身にまとえば瞬く間に流行りますよ」
ベリス王がテーブルの上の箱を開けたけど……
「うわあぁ! かわいい!」
白くて柔らかそうな布に淡い黄色いレースがたっぷり使ってあるドレス……
「ははは。そうでしょう。ベリアルをイメージしたドレスですよ?」
「こんなに素敵なドレスを一晩で?」
「いえ。本日の為に以前から作っていたのですよ。元々緩めのドレスだったので、少し手直ししただけでなんとかなりました」
『少し手直ししただけ』なんて……
こんなに素敵なドレスを直すのは大変だったはずだよ。




