愛の島って名前、なんとかならないかな(4)
「ニヤニヤ? それは簡単に想像できるよ……」
ベリス王子は妹さんを溺愛しているからね。
「というわけで、今から幸せの島に行ってみては?」
ベリス王がいつもの作り笑顔で話しているけど……
「うぅ……確かに、この島のベットは小さいから眠れそうにないし……」
「ささ。幸せの島で仲良くお過ごしください」
「はぁ……仕方ないね。ハデス……どうする?」
あれ?
うさちゃんが眠っているソファーにハデスが座っている。
まさか息の根を止めようとしているんじゃないよね?
「……気持ち良さそうに寝ているな」
……え?
ハデスがうさちゃんを撫でている!?
首を絞めているのを見間違えているんじゃないよね?
「ハデス……? えっと……」
なんて言ったらいいのかな?
「仕方ない。この島は子うさぎにくれてやろう。天界でずっとペルセポネを守っていたのは子うさぎだからな。その礼だ」
わたしを守っていたお礼?
すごく優しい表情だね。
いつもは口喧嘩ばかりしているけど、ハデスはずっと歩み寄ろうとしていたし……
本当はうさちゃんの事がかわいいんだね。
「じゃあ、わたし達は空間移動で幸せの島に行こうか」
「そうだな。静かにして子うさぎを寝かせてやろう」
「ああ。お待ちください」
ん?
扉の前でベリス王が手招きしている。
どうしたんだろう。
「ベリス王? どうかしたの?」
「はい。付いてきてください」
「……え?」
こうしてベリス王の後に付いていくと、海の方を指差した……?
「あちらに見えるのが幸せの島です」
「……? え? あちらって……」
すぐ目の前に島がある?
暗くてさっきは気づかなかったけど……
よく見たら桜の木も見えるし間違いないよ!
「いやぁ。一番安全な場所は幸せの島の近くですからねぇ」
「ちょっと待ってよ! 近くとかいうレベルじゃないでしょ!? もう島同士がくっついているよね!?」
「え? くっついては、いませんよ。島同士は微妙に離れていますし」
「はあ!?」
確かに微妙に離れては、いるけど……
こんなのジャンプすれば濡れずに行き来できるよ。
……?
あれ?
でも、違和感がある……?
「おや、お気づきですか? 『愛の島』は微妙に浮いているのですよ」
「……!? 浮いている!? 浮遊島みたいに!?」
「はい。グリフォン王国よりは浮かびませんが微妙に浮いているのです」
「……どうして? ウリエルがそうしたの? この島を創ったのはウリエルなんだよね……」
「確かにそうなのですが、違います」
「……? 何が違うの?」
「おじい様が『愛の島』の底に細工をしたのですよ」
吉田のおじいちゃんが?
細工ってまさか……
 




