愛の島って名前、なんとかならないかな(2)
「では、中に入るか」
ハデスと手を繋いで家の中に入ると……
「うわあぁ! かわいい。全部が小さいね。子供部屋みたい。あ、暖炉があるよ」
幸せの島は常夏だから必要なかったけど……
憧れだったんだよね。
暖炉の前にはロッキングチェアもある。
小さめなベットにソファー、テーブルもあるね。
チェストの上には、かわいい飾りが置いてある。
ガラスで作られた鳥かな?
なんとなくピーちゃんに似ているかも。
うーん。
でも、ピーちゃんにしては太めかな?
さすがにベリアルではないよね。
あぁ……
絵本の中に入り込んだみたいだ。
でも……
この辺りは暑いけど常夏じゃないのかな?
それとも今だけ暑い季節なの?
幸せの島と同じくらい暑いけど。
「このドアは……バスルームか。ずいぶん小さい湯船だな。ドアも小さいし。……? トイレが無いようだが」
ハデスが全部の扉を開けたね。
確かにバスルームに、かなり小さい湯船があるけど……
わたしもハデスも入れないくらい小さいよ。
あれ?
お湯が張ってある。
誰かが用意してくれたのかな?
「全体的に小さい家だな。頭がぶつかりそうだ。それに、一部屋しかないのか」
ハデスには物足りないのかな?
「ふふ。二人で過ごすならこれくらいの方がいいんじゃないかな?」
「……二人で。そうだな」
ん?
ハデスが嬉しそうに笑っている?
それにしても、このガラス細工……
「見て見て! このガラス細工。なんとなくピーちゃんに似ているよね」
「シームルグに? それにしては太いな。だがベリアルにしては細いようだ」
「あはは! わたしも同じ事を考えていたよ」
「……ペルセポネ」
「ん?」
あぁ……
熱い瞳をしたハデスの顔がわたしの唇に近づいてくる。
ゆっくり瞳を閉じると……
閉じると……?
ん?
もしかして口づけじゃなかったのかな?
だとしたら恥ずかしいよ。
口づけして欲しいみたいに思われちゃったかな?
「ハ……ゴミ……キエ……」
……?
何か聞こえてきた?
「まさか……この声は」
ハデスがソファーにあるクッションを慌ててどかしている?
「ウウン……ハデス……ゴミ。キエロ……」
え?
クッションの間にかわいいうさぎちゃんがいる?
って……
「……!? うさちゃん!?」
どうしてここにいるの!?
しかも、ぐっすり眠っているよ。
さっきの悪口は寝言だったの?
「なぜ子うさぎがここに……この島はわたしとペルセポネだけの『愛の島』だというのに」
ハデスがかなり慌てているね。
「そういえば、ベリス王がうさちゃん好みのソファーがあるからって連れ出していたの。もしかして、このソファーの事なんじゃ……」
「どういう事だ? ベリス王はこの島がわたしとペルセポネだけの島だと知っているはずだが」
うわ……
わたし達は、またベリス王に騙されたみたいだ。
これがベリス王のやり方なんだよね。




