愛の島って名前、なんとかならないかな(1)
「うわあぁ! ここがウリエルが用意してくれた……いや、ベリス王が勝手に家具を用意した島かぁ」
ベリス王が用意した金貨千枚の家具をついに見られるんだね。
どれどれ……
小さめの島だね。
ハデスと二人ならちょうどいい大きさだ。
家もあるけど少し小さくないかな……
ハデスは背が高いから頭がぶつかりそうだよね。
でも、二人で過ごすならこれくらいでいいのかも。
……?
屈まないと入れないくらい扉が小さいけど……
これも新婚さんだから?
うーん。
月明かりだから、ちゃんとは見えないけど……
このしっかりした造りはウェアウルフ族が建てたんじゃないかな?
わたし好みの、絵本に出てきそうなかわいい家だね。
家の外には綺麗な花が咲いているけど、これってパパが幸せの島で育てているダリアかな。
という事はベリス王がウェアウルフ族とパパを連れてきて島の開拓をさせたんだね。
もちろんタダ働きをさせたんだろうな……
「ペルセポネ? どうかしたのか?」
ハデスが心配そうにわたしを見つめているね。
「あぁ……うん……」
なんて話したらいいのかな?
「この島が気に入らないのか?」
「そんな事はないよ。すごく素敵だし。でも、この家と花って、ウェアウルフ族とパパが関わっているんだよね? なんだか申し訳なくて」
「気づいていたのか。そうだな。わたしも同じ事を考えていたのだ。ベリス王ならペルセポネが喜ぶからとでも言いタダ働きをさせたはずだ。ベリス王は傘下に入る種族以外には給金を支払わないからな」
「やっぱり、そうだよね……巻き込んで申し訳なかったよ」
「ウェアウルフ族もオークもペルセポネを大切に想っているからな。嫌ではなかったはずだ」
「……うん。後でお礼を言っておくよ」
「そうだな。では、中に入るか」
「うん。ベリス王が用意した最高級の家具があるんだよね……はぁ。緊張してきたよ」
「緊張? なぜだ?」
「だって金貨千枚だよ? 高級過ぎて緊張しちゃうんだよ」
「そうなのか……それなら緊張しないように次からは安い家具にさせるか」
「次!? もう新しい島なんて用意しなくていいよ! この島も幸せの島もあるんだから。それにほとんど第三地区にいるんだし必要ないよ」
これ以上ベリス王にハデスの金貨を搾り取られるわけにはいかないよ。
まったく……
ベリス王は、ハデスを騙す方法を次から次に考えるんだから。
油断できないね。
「そうか。残念だ。ペルセポネに贈り物をしたかったのだが」
「え? この島の家具はハデスの金貨で買うんだからハデスからの贈り物だよ?」
「だが、ウリエルが島を創りベリス王が家具を用意したのだ。わたしからの贈り物ではないと思うが……」
「でも金貨を払うのはハデスなんだから、ハデスからの贈り物なんだよ」
「そういうものなのか?」
「そういうものなんだよ。だから、ベリス王に何か言われても新しい島とかは、いらないからね」
「ペルセポネがそこまで言うのなら……残念だがそうしよう」
危ないね。
ベリス王に騙される前にちゃんと言っておかないと。
ハデスはわたしの為ならなんでも手に入れようとするんだから。




