秘密の部屋は不思議な物がいっぱいだね~後編~
「ええ? 結露? そんな事ないよ。ほら、晴太郎の耳に入れてみようよ」
お父様が吉田のおじいちゃんの耳に変な物を入れようとしている!?
「うわ! 天ちゃん! 耳かきじゃなくてヒルみてぇだぞ! ウニョウニョ動き出したっ! 耳に入れたらダメなやつだ!」
吉田のおじいちゃんが、かなり嫌そうにしているね。
「ええ? 大丈夫だよ。ほら、耳に入れちゃうぞぉ!」
「やめろって! よぉし、じゃあもう一個あるから天ちゃんの耳に入れちまうぞ!」
「うわあぁ! やめてよぉ」
お父様と吉田のおじいちゃんは楽しそうだね。
群馬にいた頃もこんな感じだったよ。
これが初代の神様と、今の神様なんだね。
代々の神様の側付きをしているウリエルは大変だったんだろうな。
そりゃ、幼女の人形でも作らないと精神の安定を保てなくなるよね。
「おばあちゃん……それがお父様が書いたっていう本なの?」
おばあちゃんがすごく真剣に読んでいるけど、どんな事が書いてあるんだろう。
「んん? そうだなぁ。寝室で見つかった物の絵とか効能とかが書いてあるなぁ。見てみるか?」
「うん。うわあ……小学生の絵日記みたいに書いてあるんだね。ふふ。かわいい」
「そうだなぁ。あの耳かきみてぇなやつは『吸い取る力がある』って書いてあるなぁ」
「吸い取る力? それって……? ……! 耳に入れたら脳みそを吸い取られちゃうんじゃないの!? おじいちゃんとお父様が危ないよっ!」
「ぷっ! 大丈夫だ。耳の穴から脳みそが出てくる事はねぇからなぁ」
「本当に!? はぁ。良かった」
「ははは! ぺるみはかわいいなぁ。それから、さっき見てたキラキラの宝石みてぇなやつだけどなぁ。あれは『真実の口』って書いてあるなぁ」
「真実の口? うーん……? お父様が書いたにしては難しいね。全然意味が分からないよ」
「そうだなぁ……」
おばあちゃんも何かを知っているみたいだね。
でもこれ以上訊くのは、やめた方が良さそうだ。
「ねぇ、おばあちゃん?」
「んん? なんだ?」
「この部屋は不思議な物でいっぱいだけど……なんだか落ち着くんだよ」
「そうか、そうか……」
「何て言うか……覚えてはいないけど、お母様のお腹にいた時みたいな安心感?」
「……そうか」
話を変えた方が良さそうだね。
「ねぇ、見て見て! ウリエルに髪を切って巻いてもらったの。似合うかな?」
「ああ。似合ってるぞ。すっかりお姉さんだなぁ」
「えへへ。お姉さんか……」
「ところでぺるみは明日は何を着て『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』に行くんだ? 背が伸びたから今までの服は着れねぇなぁ」
「ああ! 冥界で着るドレスも小さくなっちゃったかな!? せっかくおばあちゃんに作ってもらったのに」
「大丈夫だ。もともと裾は長めにしてたし、成長期だからゆったり作っておいたんだ。少し直せば明後日には着られるさ」
「良かった……ありがとう。さすがおばあちゃんだね」
「ははは! そうだろう?」
「あ……思い出したよ。中学の制服……少しどころかかなり大きめに作ったよね」
「そうだったなぁ。でも、他の奴らも皆そうだったろ?」
「三年間で背が伸びない子は、ずっとブカブカの制服を着ていたよ」
「そうだなぁ。でも小さい制服を着るよりいいだろ? 途中で買い直すのはもったいねぇからなぁ。あはは!」
「友達のお母さんも同じ事を言っていたよ……」
「ははは! そういう事だ! だから、冥界のドレスも大きめに作ったんだ!」
おばあちゃんは群馬にいた頃と何も変わらないね。
大好きな、豪快で優しいおばあちゃんのままだよ。
 




