親が偉いからって勘違いして威張ってはいけません
「ぺるみ! これこれ! クッキーが食べたい!」
ベリアルがつぶらな瞳をキラキラ輝かせている。
くぅぅ!
お店ごと買ってあげたくなるかわいさだよ!
「え? 話すヒヨコ?」
店員の十歳くらいの男の子がベリアルの姿を見て驚いているね。
まだ子供なのにお手伝いかな?
偉いね。
子供じゃなくても、ヒヨコちゃんが話しているんだから驚くのは当たり前かな?
「あ……魔族じゃないの。わたしのペットなの」
「ペット? 貴族はすごいペットがいるんだな……」
「えっと……偶然……たまたま……だよ。あははは……」
わざとらしくなっちゃった。
「こら! 申し訳ありません。貴族……ですよね? どうか、息子をお赦しください!」
母親かな?
「赦すって何を?」
「敬語も使わずに……生意気な口を……どうかお赦しください」
震えている?
もしかして、以前に貴族に怖い思いをさせられたとか?
「あの……わたしは……貴族じゃないよ?」
一応今は王女の設定だからね。
「でも……あの……」
母親が公爵を見ているね。
公爵の連れだから貴族だと思ったのか。
「えっと……わたしは……」
明日からアカデミーで王女を名乗るし、今言ってもいいかな?
でも騒ぎになったら大変だよね。
「おいしい物を食べに来たの! だって、露店商市場はすごくおいしそうな匂いがするから」
「え? でも……身分が高そうだし。貴族じゃないなら……まさか本当に王族!?」
「えっと……その辺はフワッとさせたいというか……あの……クッキー二人分くださいっ!」
「あ……はい」
「いくらかな?」
「え? お金をいただけるんですか?」
「え? どういう事? 露店商市場は無料なの?」
「あ……いえ。以前に来た貴族の子が……お金を払いたくないと言って……知り合いの店を破壊して……」
「え? そんな……酷い。警備兵は間に合わなかったの?」
わたしは以前、捕まりそうになったけど。
「貴族相手では……警備兵は何もできなくて」
そういう事か。
「怪我人は? 皆、平気だった?」
「店主のおじいさんが腰を痛めて、まだ寝込んでいるんです」
「そんな。酷いよ。おじいさんの家はどこ?」
「あぁ……ここからだと歩いて五分くらいの所に住んでるんです」
「もし良かったら案内してもらえないかな?」
「え? あの……まさか……さらに痛めつけるなんて事は……」
「そんなに、いつも貴族に嫌がらせされているの?」
「あの……はい」
まさか、こんなに酷いなんて……
「痛めつけたりなんてしないよ? 治療したいの」
「治療? 医者を呼んでもらえるんですか? でも……お金が払えないかと……」
「大丈夫だよ? あとになってお金を払えなんて言わないから」
まさか、ここまで貴族が平民を虐げていたなんて。
お兄様は知っているのかな?




