ウリエルは幼女の為ならなんでもするんだね
「ハデス様との間に愛らしい幼女が誕生する為には静かな空間が必要になるでしょう? 天界や第三地区では確実に邪魔が入りますし、冥界は死者の世界なので酷い実験でもしない限り新たな命は授かりません」
ウリエルの言う通りだ。
でも……
実験か。
お花ちゃんと熊太郎との間に無理矢理子供を授からせた実験はタルタロスで行われたんだっけ。
遥か昔のタルタロスは酷い場所だったんだ。
ハデスとケルベロスが頑張ったから、今のタルタロスと冥界は素敵な場所になったんだよね。
「それはそうだけど……」
「そこで、わたしは考えたのです! 『人間と魔族の世界』にハデス様とペルセポネ様だけの空間を創ろうと!」
「……幼女の為ならそこまで熱意を持てるんだね。普段は死んだ魚みたいな目をしているのに……」
「あぁ……ついにわたしの腕の中に愛らしい幼女が……」
「……いきなり幼女? 初めは赤ちゃんじゃないの?」
うーん……
幼女って何歳から何歳までの事なんだろう?
「ふふふ。ペルセポネ様の赤ん坊なら、わたしの孫のようなものですからね。ですが『おじいちゃま』よりは『お兄たん』……いや、やはりここは『にいに』? あぁ……『ウリエルお兄たん』もありですね」
うわ……
ウリエルがあり得ないくらいニヤニヤしている。
気持ち悪……
絶対にウリエルにだけは赤ちゃんを抱かせたくないよ。
ベリアルがスーたんから『メリアルお兄たん』って呼ばれてニヤニヤしているかわいい姿とは大違いだよ。
……?
あれ?
「待って!? どうしてわたしの子供がウリエルの孫なの!?」
「え? それは先程もお話しした通りデメテル様が妊娠中、毎日お腹の中のペルセポネ様に少し離れた場所から念を送っていたのです。そうして産まれてきたのですから、もうわたしの娘のようなものです。だからペルセポネ様のお子様はわたしの孫のような存在になるのですよ」
「うわ……かなり気持ち悪いよ」
「ははは! ささ、今すぐわたしの創った『愛の島』に行き子を授かり、愛らしい幼女を抱かせてください!」
「『愛の島』? 恥ずかしい呼び名だね。……ウリエルにだけは赤ちゃんを抱かせたくないよ。かなり気持ち悪いよ?」
「安心してください。妙な事をしたいなどという愚かな考えはありません。ただ、わたしは愛らしい幼女をしっかりと脳裏に焼きつけ人形を作りたいだけなのです。人形は良いですよ? 成長しませんからねぇ。ペルセポネ様のように変態になる事もありません」
「……!? 普通に悪口だよね!?」
「ははは。その通りです。ささ、早く『愛の島』に行きわたしに愛らしい幼女を抱かせてください」
「うどんみたいな木の実を鼻に注入したうえに幼女まで要求してくるなんて……」
「あ……そうでした。ハデス様、こちらをどうぞ」
ん?
ウリエルがハデスに紙を手渡した?
なんだろう?
「……これはなんだ?」
ハデスが尋ねているけど……
これってベリス王の字だよね?
「残念ながらわたしは『人間と魔族の世界』の金貨とやらを持ち合わせていませんので……」
「……? ウリエルはベリス王の店舗で買い物でもしたのか? だが、天族が魔族の店舗で買い物を……?」
ハデスの言う通りだよ。
天族と魔族は仲が悪いらしいからね。




