ウリエルとペルセポネ(4)
「……手だけ空間移動をするなんて、見た事も聞いた事もありませんが」
ウリエルが呆れた顔をしているね。
普通はあり得ない事なのかな?
「そうなの?」
これ以上は話さない方がいいのかも……
「もし、そんな事ができたら……危険です」
「危険? どうして?」
「手だけ空間移動していくらでも悪さができますからね」
「……! 確かに……」
言われてみればその通りだよ。
うーん……
ハデスは暗殺する時に手だけじゃなくて身体ごと空間移動しているよね。
っていう事はハデスにはできないんだ。
お母様達もやっているところを見た事がないし……
ベリアルとお父様がやっていた事は秘密にしないと。
じゃあ……
貴重な物を補充しているのはベリアルかお父様っていう事?
でもベリアルは天界が嫌いだから……
お父様が秘密の部屋に貴重な物を置いている?
うーん……
隠し事ができないお父様には無理だと思うけど……
「ペルセポネ様……?」
ウリエルに怪しまれているみたいだ。
話を変えないと……
「とにかく……わたしはそんな出所不明の物は飲まないからね!」
「……? 飲みませんよ?」
「……え? 飲まなくていいの?」
ん?
どういう事?
「ですから、ツルツルっと吸うのです」
「……? 飲むんでしょう?」
うどんみたいにツルツルって……
「え? 鼻からツルツルっと吸うのですよ?」
……?
鼻から吸う?
蜜を鼻から吸うの!?
「無理無理無理っ! 絶対に無理だよ! 痛そうだよ!? お風呂で鼻に水が入っただけで痛いんだからっ! そんなの鼻から吸い込んだら痛くなっちゃうよ!」
「大丈夫ですよ! ささ、早く早く!」
「はぁ!? 自分は、やらないくせに何が大丈夫なの!?」
「早くしないとデメテル様が戻って来てしまいますよ!」
「やっぱり秘密にしないといけないような物なんだね!? 絶対に吸わないからね!」
「深く考えないのですよ! ささ、早く早く!」
「はぁ!? 絶対に嫌っ! 鼻からなんて絶対に痛いもん! あ、飲んだらダメなの?」
「……飲むと媚薬になるのですよ。吸うと栄養価の高い物になるのです」
「……? 何それ?」
「詳しくは分かりません。あの部屋に置いてあるのは不思議な物ばかりですから」
「そうなの?」
「はい……髪が突然伸びる果物、疲れがとれる野菜……とにかく、おかしな物ばかりなのです」
「……髪が突然伸びる? 疲れがとれる野菜……? でも、ウリエルはそれを食べていないんだよね? どうして疲れがとれるとかの効能が分かるの?」
「書物が置いてあるのです」
「書物?」
「その秘密の部屋にある書物は不思議でして……貴重な物が増える度に、誰かがいつの間にかその効能を書き記しているのです」
「……? どういう事?」
「分かりません。ですが、秘密の部屋から髪が伸びるという果物を持ち出し毛髪の薄い者に食べさせたところ……なんと髪が伸びたのです!」
「自分は嫌だから他人で実験したんだね……」
「さすがにあんな物を口にするのは嫌ですからねぇ」
「そんな物をわたしに吸わせようとしているなんて……」
「ささ、どうぞ! 早く吸ってください!」
「絶対に嫌だよっ!」
堂々巡りだ……
いつまで続くんだろうね。




