ウリエルとペルセポネ(2)
「その辺りはお任せください。わたしがしっかりと胎教しますから」
ウリエルが胎教を?
「胎教って……? どうやって?」
「毎日お腹の赤ん坊に話しかけます」
「……? 話しかけるとわたしに似た赤ちゃんになるの?」
なんて話しかけるんだろう?
「『母親似の赤ん坊になりますように』と毎日言い聞かせれば、きっと愛らしい赤ん坊が誕生します。ペルセポネ様がデメテル様のお腹にいた時もそうしていたのですよ」
「……え? 初めて聞いたんだけど……」
「はい。身重のデメテル様に負担をかけない為に少し離れた所から念じていましたから」
……うわ。
かなり気持ち悪いよ。
「でも、どうしてわたしには話したの?」
「ははは。ペルセポネ様の図太い性格ならば負担にはならないでしょうからねぇ」
「……それって悪口だよね?」
「ささ、デメテル様が戻る前にツルツルっと吸ってください」
「ツルツル?」
本当にうどんみたいだね。
「ささ。早く早くっ!」
いつもは死んだ魚みたいなウリエルの瞳がキラキラに輝いている……
「ねぇ……どうしてお母様に知られたくないの?」
「それは……」
「それは……?」
まさか、身体に悪いとか?
でも栄養価が高いって言っていたよね?
「媚薬に使われる蜜だからです」
「……!? 媚薬!?」
それって誘惑する時に使うあの媚薬!?
「大丈夫ですよ。栄養価が高いのは事実ですし。滋養強壮の薬にも使われているらしいですよ」
「媚薬なのに滋養強壮の薬にもなるの?」
「はい。ささ、早く早く」
……うーん。
この感じ……
悪巧みしている時のベリス王に似ているね。
「……やめておくよ。お母様に内緒にしないと飲めない蜜なんて絶対にダメだよ。それに月のものがきていないんだからこの蜜を飲んでも意味がないし……」
「栄養不足ならこれを一本入れればすぐに元気になりますよ? なかなか手に入らない貴重な物なのです。たぶん……」
「……そんな物をこの短時間でどこから持ってきたの? しかも一本入れるって……大丈夫なの?」
「……秘密の部屋があるのですよ」
「秘密の部屋?」
神力の光がある隠し部屋以外にも秘密の部屋があるの?
「これは特別にペルセポネ様にだけお話しましょう。その代わりツルツルっと吸ってくださいね」
「え? いや、じゃあ知らなくていいんだけど……」
「あの部屋を見つけたのは今から数千年前……」
「ええ!? ちょっと! まだ飲むなんて言っていないのに! 強制的に飲ませるつもりだね!?」
「その部屋の中は光茸に照らされてぼんやり明るく……」
「だから話さないでってば!」
「貴重な物を使うといつの間にか補充されているのです」
あぁ……
無理矢理聞かせて飲ませる気だね。




