ウリエルとペルセポネ(1)
お母様がお父様を奥の部屋に寝かせに行くと執務室に一人になる。
うーん……
暇だね。
お母様が戻る前にどんな書類があるか見ていようかな。
どれどれ?
うーん……
相変わらず神様が解決しなくてもいいような苦情ばかりだね。
隣の家の木の葉が庭に落ちてくる……?
隣の家の聖獣がうるさい。
隣の家の生活音がうるさい?
隣の家の苦情ばかりだね。
しかも全部同じ天族が書いた文字みたいだ。
よほど隣の家に住んでいる天族が嫌いなんだね。
ん?
お父様が解決策を書いたみたいだ。
どれどれ?
『耳栓……引っ越し……眠い……』?
これが解決策?
うーん……
こんなので大丈夫なのかな?
他の書類にはなんて書いたんだろう。
……て、あれ?
これって……
冥界リゾート地計画って書いてあるよ?
冥界リゾート地計画……
全ての天族の癒しの地?
冥界は楽園?
何をふざけた事を……
冥界が穏やかな空間になったのはハデスとケルベロスが頑張ったからなのに。
まだお父様は見ていないみたいだ。
「ペルセポネ様!」
ん?
ウリエルが空間移動してきたね。
満面の笑みだよ。
どうかしたのかな?
「ウリエルは、ずっとご機嫌だね」
「はいっ! ついにペルセポネ様に似た幼女が……あぁ……長かった。どれほどこの時を待ち望んだ事か……」
ウリエルは、お母様の幼女時代の容姿に心を奪われてから幼女に目覚めたんだよね。
わたしはお母様にそっくりだから、幼い頃はよく覗き見されていたみたいだけど……
仕事はしていたのかな?
「……そうなんだね」
あれ?
手に何か持っている?
「ペルセポネ様っ! この木の実をどうぞ!」
木の実?
これが木の実なの?
変わった形だね。
うどんみたいに白くて細長いよ。
「えっと……」
どうぞって言われても……
どうやって食べるのかな。
そのまま食べるの?
「あぁ。ペルセポネ様は初めてでしたか。まぁ、そうですよね。これは吸うのです。そうすると中から甘い蜜が出てきます」
「甘い蜜が?」
「はい。これは栄養価がかなり高いらしいのです」
「そうなんだね。でも、そんなに身体に良い物なら、遥か昔にお父様が食べさせてくれたはずだけど……」
その頃のわたしは身体が弱かったからね。
本当はファルズフの毒のせいだったんだけど……
「まぁ、そうでしょうねぇ。これは幼女には強過ぎますから」
「強過ぎる?」
「はい。これは効きますよ。あっという間に身重になれます」
「みおも?」
「ハデス様との赤ん坊を授かるという事です。ペルセポネ様によく似た幼女をお願いしますっ!」
「……お願いしますって言われても、どうやったらわたしに似た赤ちゃんを産めるの?」
「そうですねぇ……気合い……ですかねぇ」
「気合い?」
そういうものなの?




