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ヘスティアとペルセポネ(1)

「はぁ……」


 今日は天界で眠る日になったからお父様の執務室の前まで来たんだけど……

 本当は今日が幸せの島で眠る日だったんだよね。

 ハデスと……その……色々あったから、昨晩幸せの島で過ごした代わりに今晩は天界で過ごす事になったんだ。


 お父様は、わたしとハデスが仲良くしているのを覗き見していたんだよね?

 一体どれくらい覗いていたんだろう。

 気まずくて、どんな顔をして話しかけたらいいのか分からないよ。


「あら、ペルセポネ? どうしたの?」


 ヘスティアがいつもの綺麗過ぎるくらい綺麗な笑顔で話しかけてきたね。

 

「ヘスティア……」


「あらあら、ふふ。そんな複雑な顔をして……何があったか当ててあげましょうか?」


「え? 当てられるの? すごいね」


「ふふ。そうねぇ……例えば、ハデスと仲良くしているところをゼウスに見られた……とか?」


「……!? すごいっ! どうして当てられたの!?」


「ふふ。ごめんなさい。本当はゼウスが嬉しそうに言いふらしていたのよ」


「ええ!? お父様が!?」


「『孫ができる』って大喜びしていたわよ」


「お父様ってば! 第三地区でも言いふらして大変だったんだよ」


「ふふ。よほど嬉しかったのね。赦してあげて」


「それだけじゃないんだよ!? わたしとお父様がそっくりだって言われたの!」


「あらあら。ふふ。嫌なの?」


「お父様の事は大好きだよ? でも、女好きでだらしないお父様と似ているなんて……複雑だよ」


「うーん……そういうところじゃなくて……大切な誰かの為に頑張る姿が似ているって事じゃないかしら」


「え……?」


 確かにお父様は魂になったわたしを守る為に、神様を辞めて群馬に来てくれたけど……

 

「ふふ。わたしも、ペルセポネはゼウスに似ていると思うわ。純粋で真っ直ぐなところがね」


「純粋で真っ直ぐ……?」


「初めてゼウスに会ったのは、わたしがお父様のお腹から出た時だったわ。わたし達は姉弟だけど、ゼウスが生まれる前に飲み込まれてしまってね。弟が生まれた事すら知らなかったの」


「……うん」


 お母様とヘラから聞いた話と同じだね。

 確か、お父様は大変な環境で育ったって聞いたけど……


「真っ暗だったお父様の身体から出た時……キラキラ輝くゼウスがあまりに眩しくてね。ヘラもデメテルも恋に落ちたのよ」


「ヘスティアは? お父様の事を好きにはならなかったの?」


「……そうね。わたしは……」


 ヘスティアが悲しそうな顔になった?


「ヘスティア?」


「あぁ……わたしはね……誰かを心から愛した事がないのよ」


「……え?」


「もちろん妹弟の事は大切よ? でも……異性として誰かを愛した事はないわ」


「……どうして? ヘスティアは天族の男性の憧れの存在なのに」


「そうね。確かに言い寄ってくる男は大勢いるわ。でも……わたしの心を満たしてくれる男は一人もいないの」


 ヘスティアは、ずっと辛そうにしているね。

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