おばあちゃんと広場で
ベリアルを抱っこしながら第三地区の広場に着くと、テーブルにごちそうが並んでいるのが見える。
うわあぁ!
すごいよ!
天ぷらにフワフワパンケーキにトマトで煮た魚もある。
「ぺるみ、帰ったか」
おばあちゃんがニコニコ笑いながら髪を撫でてくれたね。
「えへへ。ただいま」
「ちゃんとお別れできたみてぇだなぁ」
「うん。いっぱい泣いちゃったけど……前を向けそうだよ」
「そうか、そうか」
おばあちゃんが優しく微笑んでいるね。
でも、やっぱりお兄様達とお別れするのは悲しいよ。
「ばあちゃん! お風呂お風呂っ!」
ベリアルは海でバシャバシャしていたからお風呂に入りたいんだね。
「ははは。ほれ、たらいの風呂に入れ」
さすがおばあちゃんだよ。
もうたらいのお風呂が用意されている。
「うんっ! はぁぁ……気持ちいいなぁ」
たらいのお風呂に入るヒヨコちゃん……
ぐふふ。
堪らないね。
……うぅ。
今日は色々あったから、おばあちゃんに甘えたいよ。
「おばあちゃん……」
「ん? なんだ?」
「抱っこして?」
群馬にいた頃から、おばあちゃんに抱っこされるのが大好きで、ずっとくっついていたっけ。
「ん? ははは。ぺるみは赤ちゃんみてぇだなぁ」
おばあちゃんが嬉しそうに笑っているね。
「赤ちゃんでもいいよ。えへへ。わたしは、おばあちゃんの孫なんだから」
「甘えん坊だなぁ。よしよし。抱っこして髪を撫でてやろうなぁ」
「うん! おばあちゃんの抱っこ大好きだよ」
おばあちゃんに抱きしめられると……
やっぱり心が落ち着くよ。
ずっとずっとこうしていたいくらいだ。
「ばあちゃんもぺるみを抱っこするのが大好きだぞ。ん? また背が伸びたか?」
「本当? やったぁ! 制服がほんの少しきつくなっていたのは気のせいじゃなかったんだね」
「ははは。これからはどんどん大きくなるぞ」
「うん! 胸も大きくなるかな? 脱ぺったんこできるかな?」
「ん? 脱ぺったんこ? ははは! じゃあ、いっぱい食べていっぱい寝ろ。すぐに脱ぺったんこだ!」
「うん! いっぱい食べるよ。えへへ。すごいごちそうだね。第三地区の皆で作ってくれたの?」
「ああ。皆でごちそうを作って待ってたんだ。卒業はできなかったけど、今日でアカデミーに通うのは最後だからなぁ。群馬でも高校を卒業できなかったからアカデミーは卒業させてやりたかったんだ。でも二か月しか通えなかったなんて……残念だ」
「アカデミーに通わせてもらえただけで充分だよ」
「そうか……いつも我慢させちまって本当にすまねぇなぁ」
「そんな事ないよ。明後日からは冥界の仕事があるし」
「天界からの使者の相手か……」
「うん。少しでもケルベロスの仕事を減らしてあげたくて」
ハデスは冥界の仕事をほとんどしないから、ケルベロスが疲れきっているんだよね。
だから、わたしにできる事があるなら手伝いたいんだ。
「そうか……天界の奴らは狡猾だからなぁ。一人で大丈夫か?」
「あはは。そんな奴らには負けないから大丈夫だよ」
「心配だなぁ。でも、ぺるみならきっと上手くやれるさ」
「えへへ。頑張るよ。ケルベロスが門番をして、ハデスがタルタロスを守って、わたしが冥界を天族から守るの」
「そうか、そうか。冥界をリゾート地にしようと考える天族がいるみてぇだなぁ」
「うん……そうみたい。そんな事をハデスが知れば大変な事になるから、気づかれる前にその計画をぶち壊してみせるよ」
そうじゃないと天界に血の雨が降る事になるよ。




