優し過ぎるベリアル?
「……? 涙が出ない……? 身体中の涙が全部無くなったのか?」
ベリアルが真剣に考え込んでいるね。
「きちんとお別れができたからだと思うの。それにレオンハルトの事が解決したら、お兄様達は幸せの島に遊びに来てくれるし……」
「そうか。そうだったな。それにしても……この金貨のぺるみ……笑ってるな」
「……うん。ベリアルも楽しそうな顔だね」
わたしが金貨になるなんて恥ずかしいけど、ベリアルは超絶かわいいよ。
「オレとぺるみが幸せに暮らせるように約束する……そう言ってるみたいな金貨だな。自分達の事でぺるみに心配かけないように頑張るからって言ってるみたいだ」
「……うん。わたしも……」
「ん? ぺるみも?」
「わたしも『見守る者』として人間に寄り添うって約束するよ」
「お互いにお互いを想い合う兄妹……か」
「わたしは本当の妹じゃないけど……お兄様は最高に素敵なお兄様だよ」
「ぺるみ……」
「えへへ。この金貨はわたしの宝物だよ」
「そうだな」
「冥界で着るドレスにつけようかな」
「あの黒いドレスにか?」
「うん。人間の王様として頑張るお兄様に負けないくらい冥界で頑張れるように……この金貨を見て勇気をもらいたいの」
「そうだな。ぺるみ……強くなったな。泣いてばかりいたのに……偉いぞ」
「ベリアル……? ベリアルが褒めてくれるなんて珍しいね」
「……今だけ。今だけ特別だ」
「……? 今だけ?」
何が特別なのかな?
「よく頑張ったな」
「え……?」
「ずっとぺるみにばかり辛い事が起きて……オレには何もしてやれなくて。でも、ぺるみはその高過ぎる壁を何度も自力で乗り越えて……いや、違うな。高過ぎる壁をぶち壊して前に進んできた」
「ベリアル……」
「偉かったぞ。よく頑張った。ぺるみは世界一素敵な女の子だ」
「……!?」
いつも『変態ぺるみ』しか言わないベリアルが……
本当にベリアルだよね?
偽者だったりして。
「……まだ問題は山積みだ。人間は酷い身分制度に苦しんでいるし魔素が祓われた事で新たな問題も見えてきた。冥界で天界からの使者の相手をするのもかなり大変だぞ? だから……これからも辛い事がいっぱいあるだろうから……それを頑張れるように……」
「頑張れるように?」
「頭を出せ」
「……え? うん」
まさか……
いきなり殴られたりして……
でも、このかわいい翼になら殴られても構わないよ。
「特別に撫でてやるからな」
……!?
撫でる!?
あのベリアルが、わたしを撫でる!?
「ベリアル!? どうしちゃったの!?」
悪い物でも食べたんじゃないの?
全然違うヒヨコちゃんになったみたいに優しいよ。
あぁ……
本当に撫でている。
柔らかいパンみたいな翼がわたしの髪を撫でている……
最高に幸せだよ。
夢だったりして……
「はい。終わりだ」
「ええ!? もっと! もっと撫でてよぉ」
「ダメだ。ぺるみはすぐに調子に乗るからな」
「うぅ……」
もっと撫でて欲しかったのに。
いつものベリアルに戻っちゃったよ。
「でも……時々なら撫でてやってもいいぞ」
「ええ!? 本当に!?」
「頑張ったら時々撫でてやる」
「うわあぁ! うん! 頑張るっ! 毎日頑張っちゃうよ! だから毎日撫でてねっ! うわあああいっ!」
「……ほら、また調子に乗る。はぁ……全く。時々だけだ……って全然聞いてないな。困った奴だ……」
やったぁっ!
これ以上ないくらいのご褒美だよっ!
ぐふふ。
堪らないね。
ベリアルのパンみたいなかわいい翼で毎日撫でてもらえるなんて……
よぉしっ!
頑張るぞっ!




