守り守られながら生きていくんだね
「ぺるみは強いからベリアルが守らなくても大丈夫だろう?」
人魚がベリアルに尋ねているけど……
「人魚は知らないんだ。ぺるみは強いけど弱いんだ」
「強いけど弱い?」
「ぺるみは優し過ぎて傷ついてばかりいるんだ。だから、オレが強くなってぺるみを泣かせる奴をやっつけてやるんだ!」
……ベリアル。
そんな風に思ってくれていたなんて……
「ベリアルゥゥ!」
波打ち際にいるベリアルを持ち上げて抱っこして頬擦りをする。
びしょ濡れのヒヨコちゃんもかわいいよっ!
「うわあぁ! ぺるみ!? いつの間に!?」
「ベリアルゥ! グスン」
「……!? 泣いてるのか!? 誰に泣かされたんだ!?」
「うぅ。ベリアルだよぉ」
「……え? オレ?」
「だって……だって……わたしを守る為に強くなりたいなんてぇぇ……うわあぁぁぁん!」
「バカ! 泣くな! 全く……困った奴だな」
「グスン……グスン……ぐふふ」
「……!? 今……ぐふふって……まさか……これは罠!?」
「ぐふふ……ぐふふ。堪らない……堪らないよ。貝殻ビキニを着たヒヨコちゃん……濡れた羽毛がセクシーだよ。ぐふふ」
「うわあぁぁん! 意味が分からないよぉ! 誰か助けてぇぇ! 離せ! 変態め!」
「ぐふふ。泣き叫ぶヒヨコちゃんも激かわだよ」
「ははは! ぺるみとベリアルは仲良しだなぁ」
人魚が嬉しそうに笑っているね。
「仲良しじゃなぁああい!」
「え? んもうベリアルってばぁ。素直じゃないんだからぁ。ぐふふ」
誰かに想われると、すごく嬉しくて心が温かくなるんだね。
ここがわたしの居場所なんだ、わたしにはこんなに温かい居場所があるんだって思えるのは、すごくすごく幸せな事だよ。
守りたい……
守らなければいけないんだ。
聖女が命がけで守ってきた世界。
厳しい身分制度の中で必死に生きる人間。
辛い過去を生き抜いた魔族。
大切な家族が暮らす第三地区。
そして、お兄様、おばあ様、おばあさん……
繋いでいくよ。
この世界を……
温かなこの世界を……
絶対に滅んだりさせない。
(ぺるみ様……考えは立派ですけど、これ以上ないくらいお顔がにやけていますよ?)
あ、ゴンザレス……
見ていたんだね。
わたしの肩にフヨフヨ飛んできて呆れた顔をしているよ。
「今日は暗くなってきたから体力作りは終わりにするか。人魚、付き合ってくれてありがとな」
くうぅ!
ベリアルはお礼が言えて偉いよ!
「体力作りは毎日やらないと意味がないからな。明日もやるぞ」
「うん! また明日な!」
こうして人魚が帰ると、ベリアルを抱っこしたまま広場に歩き始める。
「ん? ぺるみは何か持ってるのか?」
「え? ああ。世界共通の金貨だよ。五枚作ったからって一枚もらったの」
「へぇ……見てみたいな」
「うん。まだ、わたしもよく見ていないんだ」
「あ……」
「え? ベリアル? どうかした?」
「この金貨……」
「え? ……あ。これって……」
わたしがベリアルを抱っこしている姿が刻まれた金貨?
「裏も見てみろ」
「裏? ……! これって……」
右手の小指と小指が絡み合っている……?
「約束の指切りか……」
「……わたし……さっきお兄様と指切りをしたの」
「へえ。何の約束をしたんだ?」
「『わたしがこれから先、幸せに暮らす』って……」
「そうか。幸せに暮らす……か」
「誰かの犠牲にならずに自分の幸せを考えて欲しいって言われたの」
「そうか……ぺるみはもう涙は止まったか?」
「えへへ。さっきまではずっと泣いていたの。でも、幸せの島に空間移動で帰ってきたら涙が出なかったの」
今は、すごく心が温かいんだ。




