お別れの時(8)
「ペルセポネ……お兄様は、ずっとペルセポネに守られてきたんだ。でも、本当は兄としてペルセポネを守りたかった」
お兄様が辛そうに話しているけど……
「そんな事はないよ! わたしはずっとお兄様に守られてきたんだから!」
「まだまだ頼りないお兄様だけど……絶対に立派な王になるからね」
「お兄様は今でもすごく立派だよ」
「そうかな……ペルセポネに言われると嬉しいよ。レオンハルトの事が解決したら絶対に幸せの島に行くからね」
「うん。待っているよ。怪我だけはしないでね」
「大丈夫。お兄様はペルセポネを守る為に鍛錬してきたんだから」
お兄様と微笑み合うと心が熱くなる。
偽者のわたしをこんなに愛してくれてありがとう。
わたしもお兄様の事が大好きだよ。
「じゃあ……行くね。お兄様……また明日」
もっと一緒にいたいけど、お兄様は王様だから忙しいはず。
これ以上邪魔はできないよ。
「うん。また明日……ペルセポネ……?」
「……うん?」
お兄様が右手の小指を立てて微笑んでいる?
「約束だよ」
約束……
わたしが幸せに暮らすっていう約束……?
「……うん。約束……」
優しく微笑むお兄様と笑顔で別れて空間移動で幸せの島に着くと……
不思議と涙は出てこなかった。
身体から涙が無くなったのかな?
そんなわけないか……
でも心がすごく温かいのは分かる。
きちんとお別れできたんだ。
きっとそれで涙が出ないんだね。
冷静になって考えてみたら、レオンハルトの件が解決したらまた会えるのに今生の別れみたいに泣いて恥ずかしかったかな……
二代前の聖女が眠る桜の木の前まで歩くと話しかける。
「あなたが守ったこの世界は……前に進み始めたよ。命がけで救ったこの世界は、あなたの望んだ通りの未来になっているのかな?」
オケアノスを想って、この世界を救った聖女……
あなたはどんな未来を夢見ていたの?
「……わたしも前に進むよ。あなたが守ったこの世界で、前に進むから……この世界がこれからも続くように見守るからね」
もう、夕方か……
そろそろ第三地区に行かないと皆に心配させちゃうかな?
「もう行くね。話を聞いてくれてありがとう。あなたがオケアノスの為にこの世界の浄化をしたみたいに、わたしは大切な存在を守る為に頑張りたいの。えへへ。初めは『じいじとパパとママとばあばと魚族長』だけだった家族が……今ではいっぱいいっぱい増えたの。大好きな存在が増えたの。すごくすごく幸せだよ。じゃあ……少し早いけど、おやすみ」
温かい気持ちのまま、第三地区に繋がる海水を固めた橋を渡ると、気持ちいい海風が髪をなびかせる。
あぁ……
夕焼けで海がオレンジに染まって綺麗だ。
今日は一日が長かったな。
第三地区に入ると……
もう畑には誰もいないね。
皆は夕飯の準備をしている時間かな?
……?
海から音が聞こえてくる?
なんだろう。
バシャバシャ泳ぐ音みたいだけど……
「うぅ……全然進まない」
……!
ベリアルだ!
そういえばベリアルが夕方から体力作りをするって言っていたんだ。
水で作った浮き輪をつけて波打ち際で一生懸命バシャバシャしているよ。
くうぅ!
かわいいっ!
「ほら、もっと足をバタバタするんだ!」
人魚が泳ぎ方を教えているんだね。
「うぅ……水鳥じゃないから水かきが無いんだ。でも頑張るぞ! オレがぺるみを守るんだ!」
……え?
スーたんじゃなくてわたしを?
聞き間違い……かな?




