お別れの時(7)
「手を出して」
「……? うん」
お兄様が何かを渡してくれたけど……
これって……?
「金貨だよ。世界共通の金貨……」
「世界共通の金貨? でも、確かまだ今は無理だって……」
「うん。今はね。まだ国同士の貧富の差や問題が山積みだから。でも、四大国の王で話し合ってね。王同士の結び付きが強い今のうちに金貨のデザインだけは完成させようという事になったんだ。五枚作った内の一枚をペリドットに贈るよ」
「……わたしに?」
「今は無理でも十年後、百年後、千年後にはきっと……皆が豊かに幸せに暮らせる世界になっているはずだから」
「……お兄様?」
すごく真剣な顔でわたしを見つめている……?
「見ていて……お兄様とココの子孫が世界を幸せに導く姿を。民が笑って暮らす未来を」
「……!」
「ペリドット……ペリドットはお兄様の大切な妹だからね?」
「お兄様……」
「元の身体に戻れて良かった……本当に良かったね」
「……うん。ずっと見守るよ。お兄様の子孫をずっとずっと見守るよ」
海賊の魚人族から、わたしが天族だって聞いたのかな?
でも、それを口には出さないんだね……
「ペリドット……」
「……うん?」
「ペリドットは、この世界の救世主かもしれない。でも……その前に……お兄様のたった一人のかわいい妹だ」
「……お兄様」
「誰よりも幸せになるんだよ? 誰よりも……」
「……うん」
お兄様と強く抱きしめ合うと……
これでお別れなんだと実感する。
まだ明日も会えるけど、明日は王としてのお兄様だから……
「ペリドット……」
「ん……?」
「本当の名を教えて?」
「本当の名前?」
「あ……教えたらダメな決まりがあるのかな?」
お兄様に気を遣わせちゃったみたいだ……
「ううん。平気だよ。わたしの名前は『ペルセポネ』……」
「ペルセポネ……そうか。ペルセポネ……素敵な名だね」
「お兄様……」
「誰にも言わないよ。その名も、ペルセポネの正体も……誰にも言わない……」
「あ……」
やっぱり知っていたんだね。
でも……
「お兄様……? 実はね……シャムロックのおばあ様と海賊の島のおばあさんは知っているの」
「……え? そうなの?」
「おばあさんは若い時にわたしのお母様に会っていたの。おばあさんが海賊になったばかりの頃かな。その頃のおばあさんは体調が悪くて……お母様が手助けしていたみたいなの」
おばあさんの神力の事は話さない方がいいんだよね?
「ばあちゃんの体調が……?」
「お母様には翼があるから……おばあさんはそれを覚えていたんだね。わたしはお母様にそっくりだから、今のわたしの姿を見て家族だと思ったみたい。シャムロックのおばあ様は最近アルストロメリア公爵の前に現れたお母様を見て、わたしの家族だって分かったみたいなの」
「そう……ペルセポネの母上は、ばあちゃんを助けてくれたんだね。そんなにそっくりなんだ……」
「……うん」
お兄様になら話しても大丈夫だよね?




