お別れの時(1)
「おばあ様……」
シャムロックのおばあ様の部屋の前に空間移動してノックをする。
ん?
いないのかな?
反応がないね。
でも中から人間の気配がするけど……
そっと扉を開けてみようかな。
あぁ……
おばあ様はベットでお昼寝中か。
プルメリアのレオンハルトの事で疲れているんだろうね。
レオンハルトの母親の命を奪った王妃を討つ為にこんな高齢のおばあ様が動き回らなければいけないなんて……
でも、おばあ様にとっては大切な娘の敵だから『ついにこの日が来た』っていう感じなのかな?
起こしたらかわいそうかな?
気づかれないように疲労回復の力を使おう。
……これでよし。
挨拶したかったけど……
もう行こうかな。
いや、ダメだよ。
しっかり向き合わないと。
これが最後なんだから。
「ん……? 誰? あぁ……ペリドットちゃん?」
おばあ様がベットに身体を起こしたね。
違う時間に挨拶に来れば良かったかな?
申し訳ない事をしちゃったよ。
「おばあ様……」
「ペリドットちゃん……最後に会いに来てくれたのね?」
「うん……」
「ふふ。ここに座って? お話しましょう」
「うん……」
ダメだ。
もう泣いちゃいそうだよ。
ベットに座るとおばあ様がわたしの顔を見て悲しそうな顔になる。
「あらあら、たくさん泣いたのね。目がこんなに腫れて」
おばあ様が優しく髪を撫でてくれる。
温かい手だな。
小さくて……
剣のタコがある……?
ルゥとお兄様を捜す為にずっと鍛錬を続けていたのかな?
「うぅ……おばあ様……」
ダメだ……
泣かないって決めていたのにやっぱり涙が出てきちゃうよ。
「ペリドットちゃん……たくさん泣きなさい……おばあ様はペリドットちゃんの髪を撫でる事しかできないけれど……」
「おばあ様……わたし……わたし……おばあ様に出会えて幸せだよ」
全部伝えないと……
わたしの気持ちを全部伝えたいの。
今まで愛してもらった事にお礼を言いたいの。
今日が最後なんだから。
泣いて終わりなんて嫌だよ。
きちんと話さないと……
でも、涙が溢れて上手く話せないよ。
「わたくしもよ……かわいいペリドットちゃん……」
「うぅ……」
「……これからは……別々の道を進むのね」
「……うん」
「何も訊かないわ。だってペリドットちゃんはペリドットちゃんだから。他の誰かであっても、わたくしのかわいい孫に変わりないわ」
「おばあ様……」
わたしが天族だって分かっているのに訊かないでくれるんだね。
「ペリドットちゃんの幸せを毎日毎日……ずっと願うわ」
「おばあ様……わたしも……おばあ様の……幸せをずっと願うよ」
「これから、ヘリオスの所に行くの?」
「……うん」
「そう……早く行ってあげて。ずっとこうしていたいけれど……ヘリオスも早く抱きしめたいはずだから」
「おばあ様……」
「時々……ルゥちゃんの母親に会いに来てあげて」
「……うん」
ルゥのお母さんの墓前に必ず行くよ。
「……寂しくて……辛くて……泣きそうになったら……わたくしを思い出してね。わたくしはペリドットちゃんの心にいて、どんな時も一番の味方になるから」
「おばあ様……うん。ありがとう……ありがとう」
「さあ、もう行って……わたくし……声を出して泣いてしまいそうだから。ペリドットちゃんには泣き顔を見せたくないの」
「おばあ様……」
ずっと、泣きたい気持ちを我慢してくれていたんだね。




