心に大きな穴が空いたみたいだよ
「ぺるみ……大丈夫か?」
幸せの島の波打ち際で一人で泣いているわたしにベリアルが話しかけてきた。
もしかして心配してくれているのかな?
「うん……ダメだね。今日一日、泣くのを我慢できなかったよ」
「……仕方ないさ。ぺるみは人間が好きなんだから」
アカデミーの皆と泣きながらお別れをした後に露店商市場にも行ってきたんだよね。
クッキー屋さんのジャックは馬車にはねられた後遺症もなく元気にお店に出られるようになって、元騎士のジャックも支えなしに立てるようになったんだ。
まだ剣を使うのは難しいけど、息子さんのジャックが市場のお手伝いをしたり剣術を披露したりしながら収入を得られるようになったらしい。
だから、もうわたしからの援助はいらないって言われたんだ。
これからは自分達の力だけで家を建てられるように頑張りたい……か。
元騎士のジャック親子は立派だよ。
わたしが露店商市場に出入りする理由は無くなったんだね。
寂しいけど……
これで良かったんだ。
いつまでもわたしが援助する事はできないんだから。
それから、市場の相談役はリコリス王から勲章をもらった英雄として世界中の平民の憧れになっているらしい。
少し前にあった勲章授与式ではガチガチに緊張しながら勲章を受け取っていたけど、すごく嬉しそうだった。
市場の英雄が世界中の平民の英雄になったんだ。
アカデミーの坊っちゃんもすごく喜んで、授与式の後に開いた宴で吉田のおじいちゃん直伝の踊りを披露していたんだよね。
あのわがまま放題の坊っちゃんが……
初めて会った時とはまるで別人だよ。
護衛の二人もすごく喜んでいたし、本当に良かった。
もう終わるんだ……
明日が来たら『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』を観戦して……
もう人間とは関わらなくなるんだ。
心に大きな穴が空いたみたいな……
寂しくて……
胸がギュッて締めつけられるように苦しいよ。
「はぁ……」
ため息ばかり出るなぁ。
「ぺるみ……今からルゥの家族に会いに行くんだろ? 大丈夫か?」
ベリアルの言う通りだね。
しっかりしないと……
「うん。先におばあ様達に会いに行ってから……最後にお兄様に会いに行くよ」
「おばあ様『達』?」
「……うん。シャムロックのおばあ様と海賊の島のおばあさんに会ってくるよ。おばあさんはルゥの本当のおばあさんだから」
「そうだったな。……大丈夫か? 一緒に行ってやろうか?」
ベリアルが一緒に?
嬉しいけど……
いっぱい泣いて心配させたくないよ。
「ありがとう。でも大丈夫。一人で行きたいの。絶対泣いちゃうから」
「……そうか。気をつけて行ってこいよ」
「うん。ベリアル……」
「ん?」
「いつもありがとう」
「……え?」
「口では変態とか言うけど、いつもわたしを想ってくれて本当にありがとう」
「ぺるみ……」
「じゃあ……いってきます」
「……ああ。寝ないで待ってるからな」
「……うん」
ベリアル……
本当にありがとう。
これが最後だと思うと、なかなか会いに行く決心がつかなかったんだけど……
勇気が出たよ。
お兄様とは明日も会えるけど、たくさんは話せないだろうから……
後悔しないように感謝の気持ちを伝えよう。
でも……
きっと泣いちゃうんだろうな……




