ベリス王子とペルセポネ(4)
「怖い存在……ですか? ぺるみ様が? ははは! これほど優しいお方が? では、狡猾な天族を欺く笑い方をお教えしましょう。瞳は冷酷……口角だけを少しあげる。これを試してみてください」
ベリス王子が言うなら効果がありそうだね。
「瞳は冷酷に口角だけを少しあげる? うん。やってみるよ。教えてくれてありがとう。えへへ。早くやってみたいよ」
「……本当に……心配になってしまいますよ。そんな風に屈託なく笑われると……」
「……え? それは王子が相手だからだよ。天界からの使者にはビシビシやるから大丈夫!」
「……はぁ。近くで守って差し上げたいところですが……ハデス様がいてくださるから大丈夫ですよね……」
「もう! 本当に大丈夫だってば! わたしは天界では、かなり怖がられているはずだから。ほら、ペルセポネに戻ったすぐの頃にベリアルをいじめていた天族を皆の前で懲らしめてやったの」
「……そうですか? それなら良いのですが(知らないのですね。天界の男どもがペルセポネ様とヘスティア様に夢中になっている事を)」
「ん? 何か言った?」
よく聞こえなかったよ。
「いえ。おじい様から色々聞いたので心配なのですよ……わたしは冥界や天界には行けませんが、お困りの事があればいつでもご相談ください」
「うん。ありがとう。助かるよ。ふふふ。怖く見られる為に黒いドレスを作ってもらったの。天界の使者なんかに冥界をいいようにされたりしないんだから!」
「やれやれ……すごいやる気ですね。ですが……ぺるみ様ならきっと上手くやれますよ。この世界を幸福へと導いたのですから」
「それはわたし一人の力じゃないよ。皆で協力したから前に進んだの。もちろん王子がいてくれたからでもあるよ」
「本当にぺるみ様には敵いませんね……」
「王子も王太子教育が始まるんでしょう?」
「もう、すでに始まっているのですよ」
「そうなの?」
「わたしの金庫が満タンになったら種族王になれるのです」
「へぇ。ベリス族の王位継承はそういう感じなんだね」
「かなり巨大な金庫なのでまだまだ先になりそうです」
「そんなに大きいの?」
平民の家くらいの大きさって言っていたけど……
「はい……ですが、その間は父上と共に商売ができるので嬉しいのですよ」
「ふふ。王子はお父さんの事が大好きなんだね」
「はい。世界一素敵な父親です」
「……世界一」
「もしかして、呆れましたか?」
「ん? 違うよ。ベリス王は本当に素敵だよ。娘さんの為に全てを捧げて、傘下に入る種族やベリス族を心から大切にしているでしょう?」
「……! ぺるみ様……」
ベリス王子が少し驚いた後にすごく嬉しそうに笑ったね。
「まぁ、確かに商売上手過ぎる時もあるけどね」
「父上は誤解されやすいですが、本当に素晴らしいのです」
「ふふ。分かっているよ。わたしだけじゃなくて、種族王達や第三地区の皆もね」
「……嬉しいです」
ベリス王子の瞳にうっすら涙が見えるけど……
気づかない振りをした方がいいよね。
「これからもよろしくね」
「はい! こちらこそ! では、さっそく……」
「ん? さっそく……?」
なんだろうね?




