ベリス王子とペルセポネ(2)
「ぺるみ様……わたしに、ぺるみ様の心の傷をほんの少しだけでも癒す事はできませんか?」
ベリス王子が真剣な瞳をしながら尋ねてきた?
「えっと……?」
「いつも助けられてばかりで……今度はわたしが力になりたいのです」
「王子……ありがとう。……でも」
「でも……?」
「あんなに辛かったのに、いつの間にかすっかり忘れていたの」
「……え?」
「毎日、忙し過ぎて王子に言われるまで忘れていたの」
「……! ははは! そうですか。心が満たされているのですね」
「うん。そうみたい。えへへ。……でも、ルゥの身体を勝手に使った事……死なせてしまった事は永遠に忘れないよ」
「……ぺるみ様、辛い時はいつでもわたしを頼ってください」
「ありがとう。ふふ。初めて会った時はこんな関係になれるなんて思わなかったよ」
「ははは。あの時は、前ヴォジャノーイ王だったハデス様にかなりやられましたよ」
「懐かしいなぁ」
「ははは。確かについ最近の事ですが、ずいぶん前の事のように感じますね」
「うん。あれから色々あったね」
「はい。まさかこの世界の魔素が全て祓われる日が来るなど考えもしませんでした。聖女様が天族のペルセポネ様で、我らベリス族が天族の血を引いていたとは……本当に驚きました」
「わたしもだよ。でも、落ち着くべき場所に落ち着けたっていうか……戻るべき場所に戻れた感じがするの」
「そうですね。愛するハデス様の元に引き寄せられたというか……お父上とお母上の元に戻れたというか。グンマの赤い糸……? あれは、愛しい者同士が引き寄せ合う話でしたか?」
「うん。運命の赤い糸の話だね」
「運命の赤い糸……」
ベリス王子の瞳が輝いているね。
何か商売を思いついたのかな?
「王子……?」
「確か恋人同士の小指と小指が赤い糸で結ばれているのですよね?」
「うん……そうだけど……?」
「これは使えそうですね」
「使えそう? 何が?」
「二つ揃うとリボンの形になる指輪を作れば……これは人気が出そうです」
「えーと……リボンが二つに割れていて指輪をくっつけるとリボンの形になる……とか?」
「はい。さすが、ぺるみ様です。『運命の相手とはどんなに離れていてもいつかは引き寄せられる』というメッセージを添えれば爆発的に売れますよ」
「……でも、それだとたくさんの人間がその指輪をはめるんだよね? 知らない人間同士の指輪がリボンの形になっちゃうんじゃない?」
「……! 確かに!」
「じゃあ……少しずつ色を変えるとかリボンの形が違うとか、リボンに宝石をつけるとか……全部少しずつ変えてみたらいいかも。世界にひとつだけみたいな。あ、誕生石とか素敵じゃない? 相手の誕生石のついた指輪……貴族令嬢はこういうのが好きだからね」
「誕生石……?」
「うん。生まれた月の宝石だよ。『一月はこの宝石』とかが決まっていたの」
「ほぉ。なるほど……」
「でも、この世界には無い宝石もあるだろうから、王子達が決めてもいいんじゃない?」
「確かにそうですね。これは忙しくなりそうです。アカデミーも今日で終わりですし……明日の『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』の観戦が終わり次第、父上と話し合ってみます」
ベリス王子は張り切っているね。
大好きなお父さんと一緒に商売をできるから嬉しいんだろうね。




